翼 Cry for the moon 村山由佳 集英社文庫
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満足度
お薦め度
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あらすじ
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ニューヨークで暮らし、自分の通う大学の教授を恋人に持つ真冬(通称マフィ)は、子供のころのトラウマから、恋人にもなかなか心を開けないでいた。
母親から受けた「お前を愛する男は不幸になる」という呪縛。それを何とか克服し、真の意味で幸せになろうとしたとき、母親の言葉が現実となる。 そして舞台はアリゾナへ。
傷ついた真冬の自己再生を広大なグランドキャニオンの中で瑞々しく描く。
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感想
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幸せになろうとした矢先に不幸が襲うなんて、物語としては良くある話だけど、ここで読者の心を引くのは、ネイティブアメリカンたちの生活と、先祖からの教えだろう。
真冬の再生の物語だけにとどまらず、居留地に住むネイティブアメリカンの、ナヴァホ族の長老の言葉のひとつひとつが、なんて深く心に染み入る事か・・・。
「お前は、翼を持っている。でも、その翼で羽ばたかなければ、翼には意味が無い。
cry for the moon(月をとってと泣く事)=無いものねだり。
だけど、たとえ無いものねだりでも、求めなければ手に入らないし、羽ばたかなくては自分の内面にも踏み込めないし答えも見つからない。自分の中にある目に見えない真実を見つける事が大事なのだ」と、優しく諭す長老の言葉に、真冬だけではなく、読者も共に癒されていく。
メインとなるのは、やはり恋愛だろうと思うけど、虐待、差別など、重いテーマもひっくるめて、ただの恋愛小説とはいえない深さがある。
そして、衝撃のラスト・・。これだけは・・・。読んでみてください・・。
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