2002年の読書記録*10月



炎に舞う花びら 上・下 VCアンドリュース 扶桑社ミステリー文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 「屋根裏部屋の花たち」の続編
感想 これ、屋根裏シリーズを全巻読み終えてから、書いているのだけれど、第一部「屋根裏部屋の花たち」の次に面白いのがこの「炎に舞う花びら」だ。
屋根裏で○○した、子供たちがここでは○○ってかんじで・・。・・と言う感想しかかけないけど(笑)
第一部を読んでから時間が経っていたので、集中力が切れているかな?と思いながら読んだんだけど、全然!最初の一行で、魔法のランプに吸い込まれる妖精(つうか、ハクション大魔王?)のように、本書に吸い込まれ、魅了された。
幸せになる要素をもちながら、復讐心のためか後一歩で幸せになれない子供たち。
特に双子のキャリーは哀れな運命が・・・。
読むつもりなないけどあらすじなら知りたいかな?と思われた方、ドラッグしてお読みくださいね↓
第一部のラストで、なんとか屋敷から逃げおおせた3人の子供たちは、ポールと言う献身的で紳士的な医者の元に身を寄せる事になった。
そこで、キャシーはバレリーナとしての道を、クリスは医者としての道を、それぞれポールの好意により着実に歩み始める。
でも、4年間の幽閉生活が子供たちにもたらした影響は大きかった。
双子の片割れ、キャリーは背が一向に伸びず、9歳になっても4歳くらいの身長しかなかったし、その後も4フィートまでしか伸びなかった。(1フィート=30.48cm)
恋も普通の幸せも、自分の存在が邪悪なのだと考えで諦めたキャリーは、生きる希望さえも失う。
クリスは、妹でありながらも、キャシーを愛しつづけ、キャシー以外の女性を愛する事が出来なかった。
キャシーは、ポールに恋をしながらも、バレリーナのジュリアンと結婚し男の子を産む。
が、ジュリアンは死んでしまう。
その後、母親への復讐のため現在の夫バートに近づき、彼の子を宿す。
あるパーティーの夜、キャシーは母親が暮らす想い出の屋敷に戻り、聴衆の面前で母親の仕打ちを暴露した。
そして、屋敷は火事に。第一部で絶大な権威を振るっていたおばあさんはこの火事で死に、バートも死ぬ。そして母親は気が狂って病院行き。
キャシーはクリスの愛を受け入れ、4人はひとつの家族となった。





刺があるなら  VCアンドリュース  扶桑社ロマンス文庫
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 屋根裏部屋の花たち第3部
感想 このあたりからちょっと、くどくなると言うか。
今まではキャシーの回想文、と言う形、キャシーの一人語だったけど、ここはふたりの息子たちが交互に語っている。
新メンバー、黒衣の老婦人とジョン・エイモスが隣に住んでから、ひっそり幸せに暮らしていたはずのキャシーに忍び寄る、暗い影のような不安。
この子供と言うのが、片方が憎たらしくて「なんだ、この子は」なんて思うけど、中盤から加速度的に面白くなり、ぐいぐいと読み進める筆使いはさすがと思った。
前半が結構だるい感じだったので、その分勢いが止まらない速さで読めた。以下ネタバレあらすじです。↓
誰にも知られず、兄と妹は夫婦として二人の子供を育ててきた。
子供から見てもどこの夫婦よりも中むつまじい二人。
息子は、ジュリアンの血を引くジョーリィは14歳、バレエの才能に溢れ美しく聡明で親思いのよき兄として育っていたが、バートの子供のバート(9歳)は、僻みっぽく怒りっぽく乱暴で妄想癖のある、暗い子供だった。
隣に越してきた黒衣の老婦人、実はキャシーたちの母親だったのだ。
母親は夫の忘れ形見であるバートを可愛がろうとするが、ジョン・エイモスがまるで洗脳するかのように、悪知恵をつけるのでだんだんとバートの人格が崩れていく。
キャシーはバレエの教室を持っていたがあるとき、舞台で失敗して二度と踊れない生活になってしまう。
教室を続けるのも無理でしょうと、ジュリアンの母(キャシーの姑)がやってきて、兄妹で夫婦として暮らしていることを見咎める。
そして、子供たちにも真実が知れる事となった。
そしてますますバートの行動が常軌を逸していったある日、ジョン・エイモスと一緒に黒衣姿のキャシーの母と、キャシーをワインセラーに閉じ込めてしまう。
ようやく助かった時、キャシーの母は後悔しながら死んでしまうのだった。
そしてキャシーは生前、母親が望んでもけして口に出せなかった言葉「ママ、愛しているわ」と言う言葉を、埋葬直前の母親に向かって叫ぶのだ。





屋根裏部屋へ還る  VCアンドリュース  扶桑社ロマンス文庫
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 第4部・・・。
感想 子供たちが成長してからどうなるのか?
なかなか不思議な世界が覗けます。
自分が辛い少女時代をすごしたために、子供たちのことはあまり叱らず育ててきたキャシー。
その子供たちが思春期になると、放埓だったり奔放だったりと一筋縄で行かない生活をするが、決して諦めたり見捨てたりせず、こんこんと正しい事を解いて聞かせるキャシーの根気と忍耐に感動する。
物語の中身は同じ事の繰り返しで、飽きてきそうだが、なんだか、引きつけられる。
文章の不思議な魅力に、引き込まれると言う感じだろうか。
これで、キャシーたちの物語としては最後なので、ラストも感慨深く、泣いてしまいました。
長い長い大河大ロマンス、ここに完結。ネタばれのあらすじはこちら↓ドラッグしてどうぞ
一家は例の屋根裏部屋のある屋敷に戻ってきた。
バートが相続したためだ。でもやはり相変わらずバートは暴君的な性格で、誰にも愛されない孤独な生活を送っていた。
ジュリアンはバレエの発表中のアクシデントで、下半身付随になってしまった。
夢も希望ももてないジョーリィだったが、キャシーとクリスの献身的で愛情深い説得により、立ち直りを見せる。
でも、バレエダンサーとしてのジョーリィを愛する妻は、現実を直視できず、なぐさみにバートとベッドを共にする。そしてついには双子の子供を生むとジョーリィの元を去る。
屋根裏とは何の関係も無い物語が延々と続いて、最後にはクリスが事故で死に、キャシーも後を追うようにひっそりと息を引き取る。
4人のドレスデン・ドールたちは天国で再会するだろう。
キャシーの人生は決して幸せだったとは言いがたい。
でも、だからと言って不幸せだったのか?親や祖父母からの愛情を得られなかったことを、ばねとして自分は周囲に惜しみない愛情を与え、献身的で健気な奉仕を続ける。
そして、クリスとの深い愛。普通の夫婦にある倦怠期もなんのその、いつまでもいつまでもラブラブだし。クリスが死んでしまって生きる目的も無くなって、屋根裏でクリスが愛した写真のとおりの姿で死んでいくなんて、ラストにふさわしいロマンティック!!
私はやはり一生懸命燃え尽きるまで生きたキャシーを、称えたいと思う。





ドールハウスの夢  VCアンドリュース 扶桑社ミステリー
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 「屋根裏部屋の花たち」の一世代前の物語。主人公は子供たちを閉じ込めたおばあさんだ。おばあさんにも若いころがあり、人より大きくて陰気なだけの「普通」の女性だったのだ。
それがどうして、そんな人でなしの鬼婆に??ここで謎が氷解する。
感想 これは「炎に舞う花びら」と同じくらい面白いです。
つまり、屋根裏シリーズとしては「屋根裏部屋の花たち」「炎に舞う花びら」「ドールハウスの夢」が、イチオシということか。
今までの全巻を読んでいれば、はじめからわかっていることが多いけど、作者の力量か、ぐいぐいと読ませる!
お昼のドラマにでも、日本を舞台に作り直したら「真珠夫人」くらいの人気が出そう?
ネタバレのあらすじはドラッグしてどうぞ↓
子供たちのおじいさんに当たるマルコムが、おばあさんのオリヴィア(名前があったのか!!って感じなんだよね)と結婚したのは「醜く、丈夫そうで、多産で、家庭の切り盛りが上手そう」という理由だった。
ここで憎まれ役はオリヴィアではなく、マルコムだ。この、鬼婆でさえマルコムの前ではかわいそうでならない。
結局「屋根裏」の子供たちの両親というのは最初の説明では「叔父と姪」ということになっていたのだが、実は違ったのだ。
なんと、異母兄弟だったのだ。
ラストが、「屋根裏」で子供たちが幽閉される最初の場面で終わっているあたり。また最初から読みたくなる。
ロマンスとしてはなかなか壮大で堪能できた。
ここまで、あらすじ読んでくださった人っているのかしら?
もしもいらっしゃったらお礼言います。ありがとう。





翼 Cry for the moon  村山由佳  集英社文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ ニューヨークで暮らし、自分の通う大学の教授を恋人に持つ真冬(通称マフィ)は、子供のころのトラウマから、恋人にもなかなか心を開けないでいた。
母親から受けた「お前を愛する男は不幸になる」という呪縛。それを何とか克服し、真の意味で幸せになろうとしたとき、母親の言葉が現実となる。
そして舞台はアリゾナへ。 傷ついた真冬の自己再生を広大なグランドキャニオンの中で瑞々しく描く。
感想 幸せになろうとした矢先に不幸が襲うなんて、物語としては良くある話だけど、ここで読者の心を引くのは、ネイティブアメリカンたちの生活と、先祖からの教えだろう。
真冬の再生の物語だけにとどまらず、居留地に住むネイティブアメリカンの、ナヴァホ族の長老の言葉のひとつひとつが、なんて深く心に染み入る事か・・・。
「お前は、翼を持っている。でも、その翼で羽ばたかなければ、翼には意味が無い。
cry for the moon(月をとってと泣く事)=無いものねだり。
だけど、たとえ無いものねだりでも、求めなければ手に入らないし、羽ばたかなくては自分の内面にも踏み込めないし答えも見つからない。自分の中にある目に見えない真実を見つける事が大事なのだ」と、優しく諭す長老の言葉に、真冬だけではなく、読者も共に癒されていく。
メインとなるのは、やはり恋愛だろうと思うけど、虐待、差別など、重いテーマもひっくるめて、ただの恋愛小説とはいえない深さがある。
そして、衝撃のラスト・・。これだけは・・・。読んでみてください・・。





サイダーハウス・ルール   J・アーヴィング  文春文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ セントクラウズの孤児ホーマーは、ドクターラーチに実の息子同様に育てられ、「役に立つ人になれ」と教え込まれて育つ。
一方ラーチは最善と信じて、望まれない子供を宿す女たちに堕胎手術を施している。反発するホーマーは、手術をうけに来た若いカップルとともに、孤児院を去り、リンゴ農園での生活を始まるのだった。
感想 まず、映画のストーリーとの違いに驚いた。
文庫本にして約1000ページの本書を2時間程度の映画にするためには、当然ながら省かれる部分のほうが多いのだけど、映画で描かれていなかった部分・・・特にラーチがなぜ、堕胎手術を行うようになったのかとか、メロニィという、ちょっと怖いけれど作中人物としては大きな位置を占める人物の描写、なにより、映画では短かったリンゴ農園での生活が原作ではもっと長いということ、そしてエインジェルの存在と、それを取り巻くホーマーとキャンディとウォリーの関係、彼らの愛情と友情・・・。
などなど、むしろそちらが読み応えのある部分であり、いろんな部分で「そういうことだったのか」と、映画を思い出し納得しながら読んだ。
離れていても、おたがいを常に思いやるホーマーとラーチ。ぶっきらぼうで不器用なりに精一杯ホーマーを想うラーチの愛情。去っていったホーマーを恋いながらもホーマーの人生を尊重しようとするエドナとアンジェラ両看護婦。ヒーローと信じてホーマーの後を追いつづけるメロニィ。それぞれの持つ「愛情」が、心に染みる作品だ。
上記の個人個人に対する記述が、とても、細やかで丁寧なので長い長い本書を読み終えたとき、まるでその人物たちの生涯をそばで見ていたかのように、ラストでは感慨に浸って泣いてしまった。
人や物事や場所にはそれぞれ独自のルールがある。けれど、例えルールがあったとしても、それを知らなかったり理解できなかったりしたら、ルールには何の意味があるだろう?
長い年月をかけてラーチから教えられたルールを、全うしていくホーマーの成長振りに感無量である。





こうばしい日々  江國香織  新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ *「こうばしい日々」アメリカ育ちの日本人の男の子。難しいトシゴロの姉と、アメリカ生活を楽しんでいるらしい母親と、ちょっと近寄りがたい父を持ち、ダイにぞっこん惚れてるらしいジルというGFを持つ、主人公ダイの日常をリアリティ豊に描く。
*「綿菓子」同じくトシゴロのこちらはしかし女の子が主人公。やはりおねえちゃんがいて、4年付き合った年下のBFをあっさりふって結婚したばかり。そんなおねえちゃんを主人公は許せないのだった。
感想 どちらの話も11歳とか中学生とかの思春期の入り口に差し掛かったばかりの、どこか危うくて脆い年頃の男の子と女の子が主人公だ。
「こうばしい日々」では、「照れ」や「いきがり」と共に、「普通なものをとっても好き」で、人を紹介するときにも、どう紹介したら失礼にならないかと考えて、口篭もってしまうような「繊細さ」を持ち合わせる主人公が愛しく感じる。
「綿菓子」では、この時期の女の子特有の感性や潔癖さで、自分の価値観から外れているものを嫌悪する気持ちや、好きなものへの一途な気持ちを、とても巧く描いてある。
おねえちゃんや親友の両親の結婚を目前で見て「自分は真実のアイに生きるのだ」と決心する主人公が、可愛くて愛しい。
二つの作品とも、感情表現がとてもリアルでどうしてこんなに内面描写が巧いのだろうと感心してしまうのである。
そうそうドラマティックな展開もなく、日常が淡々と描かれているだけなのに、そこに深さを感じさせる。江國さん、さすが!である。



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満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
感想



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