感想
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ただ、作者の根気と情熱に感心する。
800ページと言う長さもすごいが、取材に十数年かけたと言うのもすごい!
殺人について語るなんて、ホラーチックだと思うかもしれないけど、違うんである。
ここに描いてあるさまざまな殺人にはそれぞれのドラマがあり、時代背景によって動機や殺人方法もいろいろだ。
それを、とっても細かく丁寧に取材してきっちりと整然とレポートしてあるところに、この本の値打ちがあるのだと思う。
読むだけでハラワタが煮えたぎるほど許せない、憎い犯人もいれば、その顛末に同情して泣かずにおれない犯人もいる。
この長い作品の感想を一言で書くのは難しいが、全編にあるのは著者の「人」に対する「情」だと思う。それが読み手にひしひしと伝わり、殺人の惨さをただ興味本位に書いてあるのではないのがわかる。
作者の意図がみごとに私にははまったので、そうそう、そのとおりです!と、うなづいたあとがきをご紹介たいと思う。
「人が人を殺すと言うのは間違いなく最高の悪だが、そこには人と人とのぎりぎりの状況が現れており、人間のおかしみや不思議や恐ろしい暗部が垣間見え、人間が生きるとはどういうことか、喜びや悲しみとは何か、と言うことから始まって時代や文明のことまで深く考えさせてくれる」
2003年の〆本を飾るにふさわしい、すばらしい1冊だった。
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