2002年の読書記録 2月



七つの怖い扉  アンソロジー  新潮文庫
満足度
あらすじ なんとも豪勢な執筆陣による恐怖物語の集合。
感想 じつはホラーは好きだけど、内容が幽霊・魔よけ・塩を盛るとかそういうのは嫌い。
それじゃちっとも怖くない。
阿刀田高「迷路」:宮部みゆき「布団部屋」:高橋克彦「母の死んだ家」:乃南アサ「夕がすみ」:鈴木光司「空に浮かぶ棺」:夢枕獏「安義橋の鬼、人をくらう話」:小池真利子「康平の背中」
と、以上の豪華な内容の中で一番わたしにピンと来たのは阿刀田高の話。
あとは 乃南さんかな?
でもほんとは もっと怖がらせてください!!ッて思うわたしだった。
お薦め度 ★★★





ロード・キル  ジャック・ケッチャム 扶桑社ミステリー
満足度 ★★
あらすじ 殺人願望ある男に、殺人現場を見られてしまったカップルは? 
感想 これは ある恋人たちがやむを得ず(と本人たちは思っているのだが)殺人を犯してしまうのだけど、それをある男に見られていた・・・と言うところからスタートする物語である。
みていた男はちょっとあぶない男で、殺人願望があるのだ。
その男が 前出の二人に近づいて・・・?
そこに関わるのはなんだか自分もいわくのある刑事。

なんだか、殺人願望のある男のやる事がどんどんエスカレートしていくあたり、映画の「フォーリングダウン」だっけ?マイケルダグラス主演の・・あれに似てる感じだった。
恋人たちは男とかかわりをもってかわいそうだと思うけど自業自得だしねぇ・・・。
なんとコメントしてよいやら・・・。
ただし、最後に刑事の呟く言葉は興味深い。ストーリーとは関係ないから書いておこう。
「人間は誰でも周りを傷つけずにはいられない。その存在自体が、生きていることが何かを傷つける.それが生き物の宿命だ。」と。それに対して同僚が言う。「何かを奪うばかりではなく、返す努力をする。投げ出さずに出来る事をやろうとする。それが大事。」と。
深いコトバだと思った。
お薦め度 ★★





キャリー  S・キング  新潮文庫
満足度 ★★★★
あらすじ いじめられっこのキャリーは遅い初潮を迎えると同時に潜在的な超能力に目覚める
感想 事件までのキャリーの変貌と、それまでの生活、母親の仕打ち、同級生の意地悪などが本筋となって進行していくが、合間合間に事件後の 記事、専門家の考察、同級生の証言・・・などが織り込まれていて、時間が過去と現代とが交錯しているところが面白いと思った。
最初は不慣れで読みづらいのだけど、だんだんその事件後の証言などを読むうちに何があったのか早く知りたい!と言う欲求が高まりどんどん読み進む事になるので。
キャリーの環境があまりにもひどいので同情を誘われる。
ラストの衝撃的な事件は痛々しいくらいで、幸せになれたはずの普通の少女が追いつめられる事によって大惨事を巻き起こすに至る過程が切なかった。 わたしも何度も超能力にあこがれるんだけど、幸せなサイキックってなかなかいないんだよね・・・。
これがキングのデビュー作らしい。ごみ箱に捨てられるところを、奥さんに見咎められて続きを書いて世に出るに至ったと言うエピソードも興味深い。
お薦め度 ★★★★





異常快楽殺人  平山夢明  角川ホラー文庫
満足度 ★★★★★ とってもグロかった・・・・
あらすじ 実在の大量殺人犯7人のルポ
感想 心臓の弱い方、産前産後の方、怖いものが嫌いな方 etcは読まれないほうがいいです。
興味のある方だけ↓ドラッグしてお読みください。
この本は殺人を快楽にした世にも恐ろしい殺人犯ばかりを集め、その犯人たちの行ってきたことを記した本だ。
とても正視に耐えない表現ばかりで、読んだ直後は明らかに食欲がなくなる。
たとえば、エドワード・ゲインはヒチコックのサイコ」の原作となる作品のモデルになった男で、墓場を暴いて死体を掘り起こし加工して人体標本を作ったり食器にしたりした。
あるいはヘンリー・リー・ルーカスは「羊たちの沈黙」のレクターのモデルと言われ、360人を殺害し、映画なんて目じゃないほどの蛮行に及んだ。
キングの『IT』の、モデルとなったと言われる男は昼間はピエロで夜は少年ばかりを襲う殺人鬼。
被害者の肉を食べたり目玉をえぐったり
・・・もうこの辺でやめとこう・・・
お薦め度 お薦めしません





39【刑法第三十九条】 永井泰宇  角川文庫
満足度 ★★★★
あらすじ 残忍な殺人事件がおきた。しかし、犯人は初公判の席で常軌を逸し裁判は精神鑑定へともつれ込むが・・・?
感想 冒頭からすごく残酷な猟奇殺人描写があるので、そういうのが受け付けない人は読んではいけない!
ただし、ただのスプラッターとは違いまじめに刑法を考えた作品。
自分の恩師に背いてでも、真実に迫ろうとする精神鑑定人の卵の女性が主人公だけど、彼女が奮闘する姿は好感が持てる。
その女性鑑定人がどんどんと近づいていく真実が明らかになった時、ただの驚きだけでなくやるせない気持ちになった。
法によって守られるのは誰なんだろう?
被害者か、加害者か・・・
残酷な表現がただのゲテモノにとどまらず、大切なことを考えさせてくれる良い作品だった。
お薦め度 ★★★(殺人描写がちょっと残酷すぎるかな?必要だったと思うけど)





ぼくの美しい人だから  G・サヴァン 新潮文庫
満足度 ★★★★
あらすじ 妻を無くした27歳のコピーライターと、場末のハンバーガーの売り子41歳が、恋に落ちのめり込んでいく。しかし、二人はお互いを傷つけあう。その恋の行方は?
感想 同名映画の原作。わたしはこの映画がダイスキなのだ。
映画では描ききれていない細かなところまでわかって、なるほど!そうだったのか。と、あらためて納得する思いで読んだ。
最初は映画でも、女性がちょっと下品な感じがして好きじゃなかったのだけど、読み進むうちにだんだんと惹かれていく。
まるで親子のような年齢差の二人が、いつかは別れが来ると悟りながらも愛し合わずにはいられないというのが読んでいても切なかった。(ここからちょっとネタばれ 反転してどうぞ)
同じ女性の立場として読めば、男が彼女を友達や上司に紹介できなかったりする部分がすごく悲しい。
だから、最後に女のほうから綺麗に消えていなくなったときは拍手!
ノーラが残した手紙は涙なしで読めない。でも、 よくやった!!よくやったよ!ノーラ!!かっこいいよ! と、泣きながらノーラを称えた。
ラストは映画のほうがよかったかな?
でも、原作もやはりよかった。よかったよかった。うん(*^_^*)
お薦め度 ★★★★★





おっちょこちょ医  なだいなだ 集英社文庫
満足度 ★★★★★
あらすじ とっても平和な小さな町、ヘーワ町。そこにはじめて医者がきた。それはとんでもなくおっちょこちょいの医者だった!!だけど、そのおかげで町の人たちは知らず知らずのうちに、発展していく。でも、そこに恐ろしい軍隊が入ってきて・・・?
感想 悩みはいつまでたってもなくならない。というか、ひとつの悩みが解消されても、また新たな悩みが出来てくるものなのだ。
ヘーワ町の人たちはまさにそんな風にして、だんだんと悩みを解消しつつ成長していく。そのなかで、健康保険が出来てきた仕組みとか、ファシズムの台頭してくる過程とか、子どもにもよく分かるように平たい表現で書いてあって、とっても社会勉強になる本。
というと、なんだかつまらない本のように感じる?ノーノー!!それがユーモアたっぷりで、おっちょこちょいな医者「ディストレ先生」のおかげで、楽しく読めるのだ。
どんなにおっちょこちょいでも(前代未聞のおっちょこちょいなの)、失敗しても、うそは言わない先生の姿が最後にはきっと読む人に感動を与える。
ぜひとも子どもさんにどうぞ!!
お薦め度 ★★★★★





刑務所のリタ・ヘイワース  S・キング
(ゴールデンボーイに収録)
満足度 ★★★★
あらすじ 無実の罪?で、投獄された男の半生を、刑務所でできた友達の視点で描く。
感想 映画「ショーシャンクの空に」の原作。
映画を先に見ていたので、場面場面が浮かぶような感じだった。
主人公の寡黙な中にも精神力の強さと、諦めることのない不屈の魂と、そして頭のよさに気持ちの良い驚きと感動を与えられる。
映画では 主人公と語り手の友情とか、主人公の頭のよさとか、成し遂げた偉業とかがもっとよく分かって感動する。★4つは 映画のほうがよかったということで。
お薦め度 ★★★★





ゴールデンボーイ  S・キング  新潮文庫
満足度 ★★★★
あらすじ 世間から隠れてひっそり生きるナチス将校の生き残りと、それを知りつつ近づいて話を聞こうとした少年の行き着く先は・・・? 
感想 映画を見たのが先だったので、大方のあらすじはわかっていたけど映画より数段面白く感じた。
主人公の少年が、表面的には屈託ない無邪気な明るさの持ち主なのに、その実内面で考えていることが とんでもなく陰湿である。ナチスの残党を見つけておきながら、告発するでなく、かといってそっとしておいてやるでもない。自分のペットのように扱おうと言うのだから。(これが現代の少年事件を的確にあらわしているような気がした。)
また、ひっそりと過去を殺して生きているつもりの老人が、実はどういう欲求を持っていたか。これも戦争体験を忌避しているつもりが、心の奥底ではどうもそうではないと言うことか・・・。
二人の正反対の部分と、共通する部分とがうまく書き込まれている。結末に向けての緊迫感を、冷静なタッチで描いてあるが読者はきっとはらはらせずにいられない。
強制収容所での出来事も、迫力があったように思う。

よく似た日本の話。森村誠一の「悪魔の飽食」「人間の証明」これもお薦め。
お薦め度 ★★★★★











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