2002年の読書記録*6月



マンハッタン連続殺人  ウィリアム・カッツ 扶桑社 
満足度
お薦め度
★★★ 
あらすじ 一人暮らしの女性を狙う殺人鬼。ところが、被害者には争ったり危機感を抱いた様子はない。犯人はいったいどうやって女性の部屋に入り込んだのか?
感想 とっても、読みやすいミステリーで、海外モノ初心者にとっては登竜門として嬉しい作品。
犯人像は最初からわかっているのだが、それがいったいどこで正体をあらわすのか、その辺までは「暗闇で手探り」的なドキドキが味わえる。
世間に知れ渡っている殺人鬼のせいで警戒が厳しくなっている女性の部屋に、いともたやすく犯人が入り込めるのは何故か、そのあたりもなかなか面白いからくりだ。
犯人を追う元刑事の人間模様や推理力も魅力だった。





クージョ   スティーブン・キング  新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★★
あらすじ 200ポンドの巨体の持ち主クージョ。彼は忠実でフレンドリーなセントバーナード。ところがあるとき思いがけず狂犬病になってしまう。そこへ訪れた母親と幼い男の子は車の中に閉じ込められてクージョから逃げられなくなってしまう。狂犬病の大型犬に襲われる恐怖を描いたモダンホラー!!
感想 狂犬病になって我を失った200ポンドの巨体のセントバーナードほど怖い存在もないのではないか?
車の中でこの母子がどうすごしたかはドキドキハラハラさせられて、さすがキング氏!と思うのだけど、じつはさすがと思わせられるのはその部分だけじゃなくて、全編に流れる「愛」のせいだと思う。
ここにでてくる2家族、それぞれに問題を抱えていて、それがクージョに関わる事によってどう変わるか・・。怖いだけじゃないということを忘れて読んでいたから、最後は泣かされた。
どういっても「さすがキング氏!」としか言えないのだ。





アーモンド入りチョコレートのワルツ  森 絵都  講談社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 13歳 14歳 15歳 ―――季節はふいに終りもう二度と始まらない。シューマン、バッハ、サティ。3つのピアノ曲の調べから生まれ出たきらめく三つの物語のワルツ。(帯より)
感想 タイトルのとおり、クラシックの音楽をモチーフにして物語が連作短編と言う形でまとめられています。 短いけれど、どのお話も印象的で、実はこれを読んだのは子供を連れて図書館に行き、子どもがLDを図書館の装置で見たり、本を読んだりしている間に読んだのだけれど、それでもすごく印象に残っている。
それぞれの音楽家の作品も知らないわけではないけど、この本に出てくる楽曲は正直よく知らない(聞けばわかるのかも。トロイメライくらいはなんとか)でも、全編に音楽が流れている感じは本から伝わってくる。





リズム  森 絵都  講談社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 主人公さゆき、13歳。いとこのしんちゃんがダイスキだ。ところがしんちゃんのうちにモンダイが上がって、さゆきも心穏やかでいられない。
感想 森さんの物語の中で今まで読んだ中では一番「普通」だった。
さゆきには好感が持てるし、しんちゃんもテツも、いいこだ。ただ、13歳と言う設定が幼すぎるのか、ちょっと入り込めなかったような・・。というのも、「カラフル」や「宇宙のみなしご」があまりに素晴らしく、比べてしまうと「普通」ということになってしまうのだ。





ゴールド・フィッシュ  森 絵都  講談社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ さゆき(リズム)今度は15歳。いとこの真ちゃんが相変わらずダイスキ。でも、その真ちゃんが行方不明になって・・。
感想 今度はさゆきが少々成長したせいか、かなり良かったです。
森さんならではの切なさで私たち読者に語りかけてくれます。
将来の夢を15歳と言う若さで決めろと言われる理不尽さ、将来への不安、私たちも15歳だった時少なからずこんな事を考えたのではなかったか?
大人になって忘れてしまう大事なものを思い出させるような、しみじみと優しいストーリーが「金魚」をキーワードにして漂うように流れていく感じ。





アルプスの少女ハイジ  ヨハンナ・スピリ 各務三郎訳
      毎日新聞社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ ご存知アルプスの少女ハイジ、原作は(英語版の翻訳)上下2巻組みですよ。
突然アルムおんじの前に現れた可愛い少女ハイジは、おんじの手からもぎ取られフランクフルトへ行ってしまう。そこでクララとクララのお医者様と言う生涯の友を得て、ふたたびアルムの山に帰るハイジ。離れ離れになる事でお互いの大切さを確認し、教育、信仰の大切さを思い出し、人の輪の中に帰るおんじ。
どんなに偏屈な人の心もとろかすこころやさしいハイジの物語。
感想  ちょっとネタばれ? テレビで何度となく繰り返してみてきたアニメの原作を久し振りに読んでみた。
アニメは日本の子供を対象としてるので、あまり描かれていないが、原作ではいかにも「キリスト教」!!!って感じです。
ハイジハおじいさんのところにいる間は学校はおろか教会にも行かず、お祈りもしていなかったんだけど、フランクフルトで神様にお祈りすると言う事を覚える。
これはクララの優しいおばあ様が教えてくれた事だ。
ハイジはただ、フランクフルトから戻っただけではなく、信仰と言う手土産を持ってきた。
いったん神様に背いたおじいさんは、ハイジに諭されるように信仰心を取り戻し、村人と和解し、「人の生活」の中に戻っていく。人と人が理解しあい受け入れあうということがここで描かれており、最高に感動するくだりだ。
アニメでは一番の山場はクララが歩けるようになったと言う事だけど、原作者の言いたいことは本当はここにあったんじゃないだろうか。
このあたりは日本人にはちと理解しがたいと言うか、「若草物語」なんかでもそうだけど、神に対する絶対服従と言うか畏敬の念がしつこく描かれていて、じつはちょいと閉口する。
だからアニメでは原作ほどには描いてないのだと思う。

面白いところでは、幽霊騒動が起きた時、屋敷の人間たちはみな1人で寝るのが怖くなり、ハイジにもチネッテといっしょに寝るようはからう。ところがハイジは「幽霊よりもチネッテのほうがずっと怖かったので一人で寝たかった」とかいてあって笑った。

言いたいコトはまた日記のほうで随時書いていきます。