屋根裏部屋の花たち V・C・アンドリュース 扶桑社ロマンス
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満足度
お薦め度
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あらすじ
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1950年代のアメリカ。幸せな家族(両親と4人の子供)に「父親の死」という悲劇が襲う。4人の子供を一人で育てられない母親は、実家に身を寄せる事にする。でも、父と母には秘密があった。そして、そのために、その苗字から「ドーラギャンガ―ドールズ」と呼ばれた美しい4人の子供たちは母親の実家の屋根裏部屋での生活を強いられる事になる。
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感想
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とにかく奇抜な物語だ。屋根裏(豪邸の広大な屋根裏)に閉じ込められた兄弟たちがどうなっていくのか気になって、どんどん先を急ぎたくなるのだ!
実は大富豪の母親の実家。
母親は昔、あることから父親の怒りに触れ、勘当され、相続権を失った。夫亡き後母親は相続権を取り戻すために実家に戻る決意をするのだが、子供たちの存在を隠す必要があるというのだ。
そしてこの「母親」といったら、見目形はどんな女性もかなわないほど美しく魅惑的であるのに、その性質の悪さは今までに読んだどんな物語の女よりも悪い。
この女のために、かわいい子供たちがどんなヒドイ目に会うかと思うと、憎まずにはいられない。
それに比べて子供たちの健気な事!
子供は、長男クリス14歳・長女キャシー12歳そして4歳の双子コーリィとキャリー。この子供たちが、どんなに健気に屋根裏部屋での生活をすごしていくか。
そして、ラストの展開はとにかく晩ご飯の仕度が迫っていようが、たとえこれが深夜も2時を回っていようが、本を閉じる事が出来ないくらいだった。(私の場合)
映画化されており、昔見た記憶があるが、すっかり忘れていて展開に驚いた。もう一度映画も見たいな!!
もう少しネタばれの展開を書きますので、興味のある方ドラッグしてどうぞ。
驚くのは、祖母が子供を完全に幽閉してしまいまったく誰の目からも隠す事に成功している事だ。ある程度の年齢の子供でさえ、一所にじっとしているのは困難なのに、この双子のキョウダイはたったの4歳なのだ。祖母と言うのは厳格なうえに人間味のない冷血で、子供たちを閉じ込める事に抵抗がないらしい。ただし、食べ物と生活用品はキッチリ与える。
そんな環境から一刻も早く救い出して欲しいと子供たちの期待は母親に集中するのだが、母親は自分を支えてくれる存在なしには自立できない人間で、そんな自分を嘆きつつも、本当の意味での自立を目指す事をせずひたすら父親が自分を許し相続権を当てにしているのだ。
そのため子供たちがここから出してと、屋根裏を「訪問」する母親に向かって、矢の催促をしても「私だって苦しいのよ」「誰よりもあなたたちを愛しているわ」といいながら、いつもいつもごまかしのお土産でお湯を濁すようにのんべんだらりと言い逃れして、自分は、自分だけは豪勢な生活に戻っていくのだ。
「訪問」は毎日であったのが3日に一度になり、1週間に1度になり・・・段段と疎遠になっていく。
このあたりの微妙にしてすばやい母親の変化は見ものである。双子などはだんだんと母親の認識さえ失っていくのだ。双子にとっては長子の二人が父であり母であった。
長子二人だけならば何とか逃げることも出来ただろうが、幼い双子を連れては難しい。それに何よりも、子供はやはり母親を信じているのだ。「いつかはママがここから出してくれる」そう信じて、我慢に我慢を重ねている。
そうしていったいどれだけの年月がここで過ぎていくのか、信じていた母親の「愛」とはどれほどのものだったのか。急展開のラストはきっと読むものの心を引きつけて離さない。
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