2002年の読書記録*8月



リカ  五十嵐貴久  講談社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 出会い系サイトにのめりこんだ男が、「リカ」という女性に味わわされる恐怖。
感想 「出会い系サイト」「ストーカー」と聞いたらもう何が起きるかわかるでしょう!ストーリーはほぼ定番。そういう意味では少々面白みとか意外性に欠けるかな・・。
どうやったら、確実にオンナをゲットできるか、中年男性が血眼になって?模索して、自分なりのノウハウを確立していくところなんか、「そこまでするか!!そんなことまで考えるんだ・・。ほほー」というちょっとした尊敬の念にも似た感情(もちろん嘘です)で、見つめ。
何時来るの?と待ち焦がれた「リカ」という名前の女性が、主人公のディスプレイに現れた時から「おっ!!きたで〜〜!!来たで、来たで〜〜!!さぁ。何してくれますノン??」と、期待に胸を膨らませてしまった。下品ですみません(^-^;。
でも、この主人公、こんな目にあうほど悪い事をしたのかな?と、女性の立場から見ても思うんだけど、男性が読んだらもっと気分が悪くなるような気がする。
はっきり言えば「黒い家」を意識してるな?と思う部分もあり→リカの体臭がきついと言う部分とか目の光がどうしたと言うところとか亜流な感じはしてしまったんだけど、最後のほうは怖かった・・・というより、痛かった!!
よく言う「胸が痛い」の「痛い」じゃなくて、文字通り体が痛くなるような描写はなかなか見事だった。この私でさえ思わず「やめてぇぇぇぇ!!」と、目を背けたくなるほど、痛そうな・・。作者はきっとかなりの先端恐怖症だと思う!





最悪   奥田英朗   講談社
満足度
お薦め度
満足度★★★★
お薦め度★★
あらすじ 小さな自動車部品の下請け工場を経営する川谷。
カツアゲやパチンコでその日暮をしているチンピラ和也。
都市銀行で働くうら若き乙女のみどり。
この3人にどんなに「最悪」なことが待っているか・・。
感想 読んでる途中で何度「サイアクやん!!」と、思ったことか。
こう言うタイトルなんだからきっとこの3人には「最悪」の事態が待っているのだと、覚悟して読み進めた。
特に町工場の川谷、これが、「あ〜あ〜そんな事したら、またドつぼにはまっちゃうよ!!」と、止めてあげたくなるぐらい、人がよく、そのせいで災難や厄介ごとを抱え込んでしまうのである。
見ちゃいられないような危うさで読者を「ノンストップ!最悪!」へと導いていく。
途中「人の不幸をこんな風に描いている小説を喜んで読んでる私は、サドか、マゾか?」と・・。一種のホラーとして楽しむなら良いけど、それにしては「身近な不幸の羅列」で、痛々しくて読むのをやめようかと思ったけど、結果的には最後まで読んだほうが身のためだった。
登場人物の後のふたりに関しては、同性には厳しくなるのか(笑)銀行員のみどりがきらいだ。
自分の不幸には敏感で、他人を思いやる気持ちに欠けてる。
その点和也は「ワル」の中でも人間味があり救いがあると思う。若い男だからかな?(笑)なかなか魅力的だった。
もっと暗い話しかと思っていたけど案外平気だった。





ウェディングドレス   黒田研二  講談社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 幸せなカップルのサチコとユウ君。ところが、 結婚式当日に花婿が事故に??
電話を聞いて教会からサチコが飛び出すと、待っていたのは怪しげな二人連れ。彼らに連れ去られたサチコは弄ばれてビデオに撮られる。でも、花婿のほうは実は健在で、これは巧妙に仕掛けられた罠か?
まるでパラレルワールドのように二つの視点で描かれたミステリ。
感想 読んでる最中はとっても不思議な感じがした。
サチコもユウ君もどちらも本当の事を言っているのに全然つじつまが合わないという。
「こうかな?」「ああかな?」と考えてみるのだけど、読んでいくうちにどの考え方も却下。
最後に真実がわかったときは溜飲が下がるような気分を味わえた。
ミステリーだけじゃなく、サチコと母親、そして母親の再婚相手など、サチコを取り巻く人たちとのエピソードも切ないものがあってよかった。
ラストは私の好きなラストだった。





今日を忘れた明日の僕へ   黒田研二  原書房
満足度
お薦め度
★★★★★ 
あらすじ 事故に遭って以来記憶の蓄積が出来なくなった「僕」。事故からこっちの半年間の出来事は毎日つける日記が記憶しているだけ。その日記を読んで過去を「おさらい」してみても、いったん眠ればまた記憶は白紙になってしまう。そして日記によって知らされる驚くべき出来事の数々、映画の一こまのように一瞬だけよみがえる記憶。それらが語る真実は?
感想 「海馬を中心とした側頭葉内側部を事故によって破壊されたため起きた記憶障害」これが主人公の僕の受けた後遺症だ。これは実際「ウェルニッケ脳症」と呼ばれる病気と酷似している。
以前テレビでこの病気の男性のルポを見たんだけど、それはそれは切ないものだった。
この主人公もこの半年間、毎日、まったく同じ4月1日に目覚めるのだ。
目覚めるたびに自分の置かれた状態を知ってパニックになり、妻に説明されて事情を知り愕然とし、過去の日記を読み、その間の出来事を知り、また今日の日記を書き、そして夜になり眠る。
眠れば記憶はリセットされるからまた、一から同じことの繰り返し。耐えられるか?
ブンブン (>_< )Ξ( >_<) ブンブンだよね。特に周囲が大変だよね。
テレビの実在の男性も自分の子どもの顔すらわからないのだ。こんなに悲しくて切なくて不思議な事があるなんて!
この作品は、そんな悲しい症例にミステリーを巧く絡めて読み応え充分。過去の日記の使い方、たまに現れる「記憶の底の映像」などなど唸ってしまった。
何がどうなっているんだ?と、主人公の「僕」と一緒に追求せずにはいられない。
そして、ようやく知ることの出来た事実は・・・・。





レッド・ドラゴン 上・下  トマス・ハリス  早川書房
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 異常犯罪捜査の専門家グレアムが挑む連続一家惨殺事件。「羊たちの沈黙」の前身。
感想 もっと、レクター博士が活躍するのかと思ったんだけど、ほんのちらりとしか出てこなかったのにはちとがっかりした。
主人公のグレアムが私生活もキッチリ描かれていたのでとても人間臭くて身近に感じられた。そのグレアムがだんだん犯人に迫っていく様子の緊迫感よりも、内面の葛藤のほうが読み応えがあったように思う。
実は何よりも魅力的だったのは「犯人」だ。
過去から描かれている犯人像はなかなかに圧巻。ほとんどこっちが主人公のようだったし、また、親近感さえ沸いてしまった。
犯人と「レッド・ドラゴン」との関わりもとっても興味深いものだったし、ラストまでぐいぐい惹きつけられた。ラスト間際の緊迫感と言ったら!
「私って、海外モノ苦手って言ったっけ?」という感じで、すごく違和感なく読めた。





天帝妖狐  乙一   集英社JUMPJBOOKS
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 中篇2作品収録
* A MASKED BALL
トイレに書かれた落書きによって「会話」する高校生たち。そのうちに学校で事件が起こり、落書きとの不思議な符号は何を意味するのか?
* 天帝妖狐
アパート「タル屋」に住む夜木一太郎は怪我をするたびに本来の自分とは違う何者かに変身していく。その夜木がアパートの経営者の娘に宛てた手紙に書かれたショッキングな真実。
感想 * A MASKED BALL
お互い顔も知らないものがトイレに壁に落書きすると言う形のコミュニケーションを取る。はて?どこかでみたぞ?そう、ネットと同じだ。bbsやチャットという、ネットでのコミュニケーションと同じだと思った。でも壁に書くというのが、ネットよりも実体を伴っていてそれでいて逆に現実感が薄くて(薄いよね?)物語の神秘な感じをさらにかもし出しており、いい味出していた。
2作品ではコチラのほうが私は好きだな。

* 天帝妖狐
「暗黒童話」と同じようなテイストのダークなお伽話・・・と言う感じ。
どうしてこんなからだになったのか、主人公の夜木がいつも巻いていた包帯の意味は・・などなど、一人で暗がりで読んでいるとちょっとぞっとするだろう。作者が描く独特の雰囲気をもつホラーとして楽しめる。
ただ、夜木と、登場人物の一人骨川(スネオじゃないよ)との関係も微妙にて絶妙。





多恵子ガール  氷室冴子  集英社文庫
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ なぎさ君のことが好きな多恵子。でも、なかなか巧くいかなくて。そんなじれったい女の子の気持ちを見事に描いた「なぎさボーイ」の姉妹編。続編じゃないところがミソ!
感想 こっちは「なぎさボーイ」よりも好きだ!うじうじとしてるなぎさよりも多恵子のほうがなんぼかイサギいいし、考えてると思う。
話のヤマはなんと言ってもなぎさをはさんでのライバル「槙修子」だけど、なぎさとは全然違う多恵子の視点がおもしろい。
視点を変えて同じ物語が展開されるなんて、「バックトゥザフューチャー」の「1」と「2」のよう関係ですごく面白かったけど、 なんといってもまだまだ中学高校の恋愛だもんね。大人になった私たちからみたら「ほほえましい」で終わってもごめんしてね(^-^;
あとがきに氷室さんの書かれた文章にご自分の当時を思い出して「好きなオトコノコと隣の席になったら給食のうどんが食べられない(ずずず〜〜っと音が出るから!)」とか「貸してあげた定規をハンカチでくるんで大事に持っていた」とかのエピソードが泣かせる!
本編よりも実感がこもってるだけあってジーンとした。





なぎさボーイ  氷室冴子  集英社文庫
満足度
お薦め度
★★★ 
あらすじ とってもハンサムで頭も良くてスポーツも出来る!だけど、小柄で女顔の「雨城なぎさ(この女っぽい名前がまた本人の悩みの種)」そして親友「森北里」は日本舞踊の家元の跡とり。北里のいとこの「麻生野枝」クールでオトナっぽい女の子。その親友が「原田多恵子」野枝とはおよそ正反対のホットな女の子。その子分的存在の「三四郎」。5人が繰り広げるとっても賑やかでちょっぴり切ない「初恋物語」
感想 ずっと以前に「北里マドンナ」を読んだ。すごく良かった。この前編とも言うべき作品が「なぎさボーイ」「多恵子ガール」の2作品だ。念願かなって今回読むことが出来た。(*^_^*)
三四郎が年上の女の子に恋心を抱くところから話は始まるのだけど、それによってなぎさが自分の中の多恵子への感情に気づいて目覚めていく。その途中には、多恵子以外の女の子が出てきたり、または多恵子に自分以外の男の子の存在があったりと、すんなり行かない。
すんなり行かないところが青春やナー・・若いっていいなー・・かわゆいなーみんな・・と言う感想になるのだ。
ただ、 感動としては「北里マドンナ」のほうが断然上回る。ということは書かせていただこう。





満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
感想