2002年の読書記録*9月



タイガーと呼ばれた子  トリイ・ヘイデン  早川書房
満足度
お薦め度
★★★★★
あらすじ 「シーラという子」の続編。
と言うことになってはいるが、感動的ではあるけれど、どこかちょっと奇麗事に過ぎたきらいがあるように感じた前作に比べて、断然もっと奥まで踏み込まれており、作者自身のジレンマも余すところ泣く描いてあるように見える。
続編と言うよりは角度を変えて、深さを変えて、もう一度シーラを見つめなおした「もう一つの『シーラと言う子』」なのである。
感想 何とかならないの〜〜〜!?
読んでいる最中に常に私の頭にあった言葉だ。
こんなにも、こんなにもこんなにも、シーラは母親を求めているではないか。全身全霊で母親を恋うているじゃないか。
作者も、それこそ全身全霊で受け止めて教師と言う立場を超えて、シーラにかかわり愛したことはわかっているけれど、それでも、シーラには足りないのだ。
お願いだから、この哀しい傷付いた少女を何とかしてあげて!もっと、もっと、もっと!
部外者の私が(同じ立場にあっても絶対にここまで出来ないだろう)何を言うんだ・・というギモンはこの際横っちょにおいといて、ただひたすら哀しくてじれったい。
シーラの求めているものとトリイの与え得るものの落差を思い知るたび、「無力」と言う言葉を痛感してうなだれるだけ。
その中で、シーラが自分の存在を確認して、自分の道を切り開こうと模索する姿は、読むものの心を揺さぶる。しかし、「シーラの強さがわれわれを励ます」と、締めくくるにはあまりにも、シーラが痛々しく切ない本書なのである。
それでもやはりシーラにエールを送らずに入られないのだ。





クリスティーン  S・キング  新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 冴えない高校生のアーニーはある日一目ぼれをした。その名はクリスティーン。だけどそれは女の子ではなくて、ルベイと言う男の持ち物である「58年型プリマスフューリー」。、廃車同様のポンコツ車。
車を手に入れた途端、冴えないけれども友達デニスや家族を大事にしているアーニーは、刻々と変わって行く。
まるで何かにトリツカレタヨウニ。
語り手デニス、アーニー、アーニーの初めてのGFリー、そしてクリスティーン。三角あるいは四角関係のもたらす恐怖と悲劇。
人生で一番無謀で、輝く時間。クサイけど「青春時代」。アメリカンハイスクールで織り成す友情と恋愛。怖いけど甘酸っぱく切ない物語。
感想 やっぱりキングはいいですね!
この話はキングらしく、とても怖い。上下2巻もあって長いのに、全然中だるみもせず特に下巻に入ってからはどうなっていくんだろうと、結構心臓がバクバクする感じで、途中で止められなかった。
気の弱い少年がだんだんと変わっていくのも、リアルに描かれている。
キング氏自信イジメられっ子だったと言うけど、こう言う描写のリアルさにもそういう背景があると思うとちょっと切ないけど、天網恢恢と言う感じで後でごにょごにょ。いい気味!!ざまぁ見ろ!!という顛末になるのはお約束。なかなかの残酷さで満足(?)!!
そこにもうひとつ重要なデニスとの友情。これがいい!!すごくいい!!
変わってしまったアーニーを、心配したり疎ましく思いながらデニスが過去を思い出したりするんだけど、そういう場面がまた泣けるのだ。憎いぐらい巧い!
怖いだけじゃなくほろりとさせられるのは、わかっているけど、期待を裏切らない・・・期待以上の切なさが残った。
それにしても、章の冒頭に必ず書かれているオールデイズの歌詞。ヘンな歌詞だね(笑)アメリカ人ってあんな歌を歌っているのね(笑)





滅びのモノクローム  三浦明博 講談社
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★★★
あらすじ 広告代理店の仙台支社に勤める日下は、骨董市で掘り出し物のリール(釣り用)を見つけ、女主が価値を知らないのをいい事に、安値で買う。だが、いっしょに引き取ったスチール缶の中に、古びたフィルムがあり、フライフィッシングをしている場面が映っている。
高度な技術を持つカルト大西と言う男に復元を頼んだが、復元作業中にフィルムいっしょに消えてしまった。
そのとき、骨董市の女主が接触してきてフィルムを返してくれと言う。
何のために?大西はどこへ?
そしてついに殺人事件・・・。
第48回江戸川乱歩賞受賞作
感想 冒頭の長崎原爆の地獄絵図が、どう本編に絡んでくるのか?
と言う部分で少し期待はずれだったような気がする。
フィルムが戦争犯罪に関連していると言うのがわかってくると物語りはスピードを増すが、事件がおきるのが物語りも半ばを過ぎてからなので、ちょっと間を持たせすぎたように感じた。
日本が戦争中に国全体でどんな精神状態だったのか、何をしてきたのか、提起している問題は重く深い。私たちが、知らない振りをしてはいけないことだと思うので、そういう意味でもすごく興味深いテーマだった。
戦争と政治家・・・多分こう言うことが実際にあると思われるので(多分!!)本当の事を知りたいと思う。


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★★★★
あらすじ
感想