アトランティスのこころ(上・下) スティーブン・キング 新潮文庫
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満足度
お薦め度
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あらすじ
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ボビーは母親と二人暮しだが、その母親の愛情に植えてもいた。
ある日同じアパートの階上に風変わりな老人テッドが越してきて、母親はいい顔をしなかったが、ボビーはその老人から本や友情や父親のような愛情を与えられた。
そのテッドが恐れていたのが「黄色いコートの下衆男たち」だった。それはなぜか・・・。
という、あらすじの「黄色いコートの下衆男たち」から始まり、物語はボビーの下を離れ、ボビーを取りまく人たちの物語「アトランティスのハーツ」や「盲のウィリー」などが語られ、巡りめぐって、またボビーの元に還ってきて終わる・・という、連作短編(中篇あるいは長編)集となっている。
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感想
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昔よく聞いた音楽を久しぶりに聞いたりすると、当時の思い出がどぉ〜っと押し寄せてくる。その時には、当時の暑さ寒さや匂いさえもいっしょに思い出されたりする。
キングの小説はそういう部分を読者に味わわせてくれる小説だと思う。
特に私が好きだったのは「アトランティスのハーツ」で、これはボビーのGFのキャロルが、当時付き合っていたピートが後になって60年代を語る・という物語だ。
「わたし」という一人称で思い出話をしているこれは、私には郷愁感たっぷりで、特に泣けるような物語でもないけれど、胸が締め付けられるような気がした。
ベトナム戦争のことも書いてあり(というよりも、それが60年代なのかも)後の「なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」などでも感じるけれど、アメリカ人のベトナムに対する思いが垣間見えて感慨深かった。
ホラーではないキングも、とってもいいのである。
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