2003年の読書記録*4月



呪われた町 (上・下) S・キング  集英社文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 作家のベンは、幼いころに不気味な記憶を持つふるさと、メイン州の田舎町セイラムズ・ロッドに、25年ぶりに戻ってきた。
時をほぼ同じくして、ベンの「不気味な思い出」の屋敷に、不思議な人物が住み着いた。
そのころから、町では謎の行方不明事件や死亡事件が相次いで起きる。
ベンは町で得た恋人のスーザンや、教師のマット、医師のジミーらと共に事件を調べようとするが・・・。
感想 お友達のぴょんさまからお借りしました。
キングのデビュー作「キャリー」に続く、記念すべき第2作とのこと。
吸血鬼ものとしては、とってもオーソドックスな仕立てと思う。
まず、こんな事があって、次にああなって、最後はこうなる・・みたいな。
そこにキングらしい情緒豊かな人間観察がちりばめられていて、キング好きには「うんうん、これこれ!!」みたいな、喜びがある。
なんせ、事件が始まるまでは、延々と町の人たちを1章ずつ紹介しているのだけど、まだるっこいと言うよりは、「キング」を楽しめる部分である。
このストーリーを元にして?小野不由美さんが、「屍鬼」を書いたのだとか。
「屍鬼」は、日本独特の湿り気を持った、不気味さと吸血鬼の悲しさ切なさを融合させた秀作だと思うが、こちら本作は、読むだけで「瞳孔の開いた青い瞳と、青いほどに白い肌に耳まで裂けた真っ赤な唇から血にまみれた牙が覗いている金髪の美少女が、窓の外で“開けて〜・・”と呼んでいる様」が、ありありと思い浮かんでくるようだ。
吸血鬼は金髪碧眼が似合うと、再認識したりして。





リアルワールド   桐野夏生  集英社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 十四子は高校3年生。
カラオケでは「ホリニンナ」などという、仮名を使って登録したりしている。
友達と4人でグループを作っている。
あるとき、となりに住む男子高校生が、母親を殺した。
その男の子が十四子の自転車を盗んで・・・。
十四子、ユウザン、キラリン、テラウチというグループの面々と、殺人を犯した男子高校生の「ミミズ」5人の目を通して描かれる事件後の数日間。
感想 名古屋オフ会でけこたんさんからゲットした本です。
「柔らかな頬」で、桐野離れするまで、桐野さんにはある一時、ちょっとはまって読んでいた。
とっても久しぶりな感じだ。
HPを立ち上げてからは初めて読む事となった。
「OUT」の中でも、主人公に高校生の娘がいて、それが今でもとっても印象に残っているんだけど、桐野さんの描く女子高生って、すごく癖のある子なんじゃないかと思う。
ここに出てくる4人グループも、一見仲良しなんだけど、心の中では結構冷静な目で相手を観察していたり批判していたりする。
そして、自分で思っていることと、他の子から見た事と違っていたり。
自分ではうまく隠しているつもりの事が実はバレバレだったり、でもそれを知らん振りしてたり、大人かおまけのしたたかな部分があるのだ。
「いまどきの子ってこんな感じなのかなー」と思いながら読んだけど、さわやかな読後感と言うのはちょっと違うかな。
でも、そうしたどろどろしたのが好きなので、私は楽しめた作品。





誘拐の果実  真保裕一  集英社 
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ ある、医師の家族の娘が誘拐された。
しかし、犯人の要求するものは「身代金」ではなくある人物の「命」だった。
感想 まったく先が見えなくて、え?え?という感じで読み進む。
この物語の中には3つの誘拐が起こるのだけど、その中での人間関係というか、やり取りと言った部分がなんと言っても、面白かった。
真保さんって、割と若いと思うのだけど、年の割に人間の老獪なしたたかさをうまく描いていると思った。
そしてトリックも今までに私が読んだことのない類の物で、はっとさせられた。
ただ、私はそっちの方面にはぜんぜん疎い奴なので「あがる」「さがる」ということすらピンと来なくて、これが分かればもっと面白いのだと思うと残念だったけど。

でも、ミステリーとしては正直言うと、私の好みじゃない。
「へー・・そこまでする・・」って言う・・ね。
私にはミステリーの「動機付け」って、一番の関心事。
ちょっと、納得できなかったかな。





暗い所で待ち合わせ  幻冬舎文庫  乙一
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ ミチルは目が見えない。
唯一の肉親の父親が死んでからは、一人暮らしだ。
あるとき、近くの駅でホームから人が落ちて死んだ。しかも、どうやら殺人事件らしい。
その犯人として追われているアキヒロが、ミチルの目が見えないのを利用してミチルの家にこっそり忍び込んだ。
それから、奇妙な二人暮しが始まった。
感想 これも、名古屋のオフ会でトラキチさんからいただきました。
乙一さん特有の切なさを持ったストーリだと思う。
ミチルにしろアキヒロにしろ、すごく孤独に生きている。
「それでいいんだ」と思う事で自分の心をごまかしているが、ひとは孤独では生きられない。
それに気づいて、殻を破ろうとしていく二人の姿が感動的だった。
ミステリーとしても、面白く読めた。
こういう「やられた!」って言う感じ、好きです!





いろはに困惑倶楽部  原田宗典  角川文庫
満足度
お薦め度
★★★★★
あらすじ 雑誌「クレア」に連載されたエッセイを、読者の投稿と一緒に単行本化したもの。
「いろはにほへと・・・」の、文字からお題を作り、お題にのっとっての投稿と著者のコメント。そして著者本人の爆笑エピソードの数々。
感想 ワイワイチャットでお知り合いになった翔ママさんからのご紹介。
むちゃくちゃ好みでした!
もう、笑った笑った。
最後の方は「あとちょっとで終わってしまう」と、もっともっと読んでいたいような、名残惜しいような、そんな本だった。
何が一番印象深かったかというと・・・うーむ、一つに絞るのは難しいが、あえて言うなら「ダイビングとウンチョスの危険な関係!?」あたりかな〜。
それとも、「若き日の原田部長を苦しめた“エマニエル”の嘘」かなー?
マジで、その後の顛末がとーーーーーーーーっても気になる「原田部長が小学5年の夏休みに遭遇したマジで恐ろしい出来事」かな〜〜?
うーん、どれをとっても、面白かった〜。
どう?読みたくなったかな?(笑)





殺人勤務医  大石圭  角川ホラー文庫
満足度
★★★★★
あらすじ 古河は中絶の専門医。
中絶を専門にしながらも、看護婦や院長には絶対の信頼を得ていたし、妊婦にも真摯な態度で接している。
でも、実は彼には裏の顔があった。
彼の地下室では何が行われたいたのか。
感想 オフ会でお知り合いになったあさみさんのご紹介です。
ホラーと言うより、エログロって感じですね。
ゴシックホラーなんかが好きな人が読むと、きっと受け付けないと思う。
「殺人鬼/綾辻行人」っぽいかな、と思います。
主人公の中絶専門の医者が、幼いころに受けた親からの虐待のせいで、価値観や性格形成が著しくゆがんでいると言う設定なのだけど、どこか、それだけではない哀切感みたいなものがあるように思う。
中絶をしていて、それが殺人であるから、自分は殺人鬼であると、開き直っているのだけど、そう思い込む事で自らを追い詰めているような切なさも感じられた。
グロイのが好きな方は必読★★★★★です!





呪怨  大石圭  角川ホラー文庫
満足度 ★★★★★
あらすじ 強い怨念を持ったまま死んだ者の呪い=呪怨。
あまりの衝撃ゆえに、発禁寸前にまでなった、話題のビデオ「呪怨」の、完全ノベライズ。
感想 ビデオ「呪怨」は、とっても怖かったんだけど、オムニバス風の作品になっているため、各エピソードのつながりがよく分からなかった。
でも、この本を読んでそれらが一気に解明した。
普通は「訳がわからないからこその怖さ」と言うのがあって、訳がわかると「なんや、そうやったんか」みたいな得心があると、怖さも半減したりするんだけど、この本に限ってはビデオの怖さをもっと助長してくれるという感じだろうか?
しかも、これがノベライズだとは!!
ビデオよりも完全な感じがした。
と言っても、私は「呪怨」を見ただけで「呪怨2」は見ていないんだけど。
内容的には、先に読んだ「殺人勤務医」が綾辻さんの「殺人鬼」を彷彿とさせるのに対して、こちらはそれに加えて「リング/鈴木光司」の味わいも持ちつつ・・と言った所か。
それにしても、「呪怨」
この字面だけで、もうすでに怖い感じがしないでしょうか?
著者の作品に「アンダーユアベッド」と言うのがあるようで、今必死になって探しているんだけど、このタイトルも、それだけでもう怖い、ベッドの下を見るのが怖くなるような、そんな気がしませんか?
ぐふふ・・・・・・





スタンド・バイ・ミー  S・キング  新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★★
あらすじ ゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人は数日前から行方不明になっている少年が、20〜30マイル離れた線路わきで、死んでいると言う話を聞き、探しに行く事になった。
夏休みが終わると、4人は中学に上がる。
その最後の夏休みも、もうすぐ終わると言う時期の少年たちの冒険物語。
感想 驚いた!
映画がすごくよいと思っていたが、原作はさらにさらに、さらにすばらしかった。
主人公のゴーディ少年が作家志望ということで、キング自身の自伝的なストーリーだと、解説にも書いてあるが、そうだとしたら、身を切るような気持ちで書いたのではないだろうか?
「なににもまして重要だと言う事は、口に出して言うのがきわめてむずかしい。
なぜならば、ことばがたいせつなものを縮小してしまうからだ。
おのれの人生の中のよりよきものを、他人に大切にしてもらうのは、むずかしい。」
と言う文章が、胸に迫る。
「想い」っていうのは、自分のものだけならば「言葉」にする必要なんかない。
「言葉」と言うのはコミュニケーションのための道具なんだから・・・。
映画にも、出てくる鹿との遭遇シーン、これも、映画では静かな中で、少年の驚きと感激がよくでていると思ったが、原作を読んでみると、もっともっと、深い「想い」が分かる。
このように、映画で「あのシーンよかったよね」と言うべきシーンが、原作では、なにもかも、もっともっと深みを感じさせられる。
「あそこ(映画のワンシーン)じゃないんだよ、クリスが泣くのは!!」みたいな・・。
物語は、すべて主人公の回想なんだけど、回想ってノスタルジックで切ない。その切なさを描ききっているのがキングの持ち味と思う。
川はまだ流れている。そして、わたしもまた。
キング作品、トップ3に入るすばらしい作品。

他人に、自分が思うのと同じくらいには大切にしてもらえないのなら、伝えたくない・・そう感じる「思い出」って、誰にもあるよね・・・。


「マンハッタン奇譚クラブ」
短いながらも、すごいインパクトのある内容。
乱歩の「赤い部屋」を思い出した。





K・Nの悲劇  高野和明 講談社
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ 修平は、新進のルポライターで、出した本が20万部の売上をとり、人生がばら色だった。
傍らには美しい妻、果波がいる。新しいマンションにも移ることが出来て、順風満帆という感じだ。
しかし、果波に赤ちゃんが出来たころから、歯車が狂い始めた。
修平にとって、今はまだ子供を持つ時期ではないと思われたので、中絶することにしたのだ。
すると、課波の様子がおかしくなってきた。
まるで課波ではないような・・・
感想 スリリングな展開で、ストーリーも面白く、一気に読めた。
特に「誰もいるわけないのに、誰かがいるようだ」と感じる、ホラーな感じがよく出ていて、ゾクゾクさせられた。
中絶というデリケートな問題も、きちんと向き合うように提起されていて、ホラーとはいえ考えさせられたり。
このあたりは「13階段」で、世間をあっと言わせた著者ならでは・・と思ったが、でも、比べたら物足りなかったかな。
ホラーとしては中途半端な感じもした。
その中途半端さも、著者の目論見かな・・と思う終わり方だった。





満足度
お薦め度
★★★★★
あらすじ
感想