2003年の読書記録*6月



裏と表  梁石日  幻冬舎
満足度
お薦め度
★★
あらすじ 金券ショップを開いた主人公が見た、裏金作りの一部始終。
感想 うーん、どうも私は金融関係に弱い。
株価の値動きだとか、為替相場だとか、そういうのもよくわからない・・はずかしながら、数字が下がっているのに「値上がり」とか、何の事やらさっぱりなの。
この小説も、金額が大きく、何億円の手形をどうして、何パーセントの利鞘でいくら儲かる・・とか、なんか、さっぱり分からなかった。
なんか、「今、緊迫している場面だ!」とか言う感じはおぼろげに伝わってくるんだけど、それの緊張が何のためか、どこから来るのか、それがわからないの。
わかったのは、かく登場人物の人間関係と金券を動かしてお金をもうけるのは、難しくって私には無理だと言う事・・(笑)

このお話を「おもしろい」と言う人は、頭良いんだろうな〜と、感心します。





聖家族のランチ  林真理子  角川書店
満足度
お薦め度
満足度=★★★★
お薦め度=
あらすじ 小さい頃から美貌の持ち主の主人公は、いまや押しも押されぬ料理界(?)の、寵児。
世間に家庭料理を教える主人公の、家庭とはいったい?
感想 林節!
いつものように「この女、ばかか?」と言うような女が主人公だ。
それなのに、どうしていつも読んでしまうのか・・林さんの文章には私をひきつける何かがあるんだと思う。
文章もすごくうまい作家さんだとおもう。
心理描写も見事である。
著者の心理が反映されていると思うと、ここまであからさまに描いて、著者自身は恥ずかしくないんだろうか?と言うぐらい、赤裸々な内面描写には恐れ入る。
こんなバカなオンナと私は、違う人種だ!と思いならがらも、いつの間にか主人公に同調してしまうのは、筆力のなせる技ではないでしょうか?

それにしても、この小説、すごく思い切った内容だ。
タブーを犯しているのでは・・・。
いまだかつて ここまでのことを描ききった人がいただろうか?
キワモノ作家ならともかく、そうじゃない、ちゃんとした文芸作家で。

うーん、恐るべし 林真理子・・。



 

白蓮れんれん
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 明治から大正時代にかけて活躍した、女流歌人「柳原白蓮」という実在の人物の愛に生き抜いた一生を描いた作品。
感想 あいかわらず女性の心理描写の見事な事といったら!
林真理子さんの右に出るものは無いと信じている。

このY子:あきこ(白蓮の本名)、 華族の生まれでありながら、一旦は伯爵家に嫁ぐが離婚して、九州の大富豪に金で買われるようにして再婚。
しかし、その結婚は幸せなものではなく、うつろな結婚生活を歌を書くことによって埋めようとして、その才能を発揮。
佐佐木信綱に師事して「踏絵」と言う、歌集を出版する。
その歌がきっかけで年下の学生龍介と出会い、二人は激しい恋に落ちる。

とまぁ、林さんの描く女の典型のような人が、歴史上すでに存在していた!と思ったけど、昔であるほど、愛のない結婚であり、道ならぬ恋に走った恋人たちも多かったのかもしれないと思う。

前半は、華族の出身と言う事もあり、主人公の鼻持ちならない部分ばかりが目に付いたんだけど、龍介と出会い真剣な恋に落ちていく様は、同じ女性として同情を感じて応援したくなった。
また、その逢瀬をなんとか実現しようと努力する様は迫力があった。
実話と思えばなおの事。
それに、なんとこの二人、恋愛時代に700通を越える書簡のやり取りがあり、それが残っているらしいのだが、著者は本作を書くために、すべて見せてもらったそうだ。
本作品中にも、何通かそのままの文章で載せてあり、生々しい迫力に驚かされる。
これを、ここまで、小説として描ききった林さんもすごいと思う。

ともかく、この二人は結局駆け落ちするのだけど、その顛末と言うのが驚きの連続。
時代だなーと、びっくすることだらけ。
夫に絶縁状を送るのに、新聞にそれを載せたり、またその文章は白蓮本人でなく、周囲の学生が考えたり。
また、たかが、一組の夫婦の離婚と言えど、華族だった白蓮のために宮内庁まで動いたり。
今なら考えられない(私が知らないだけか)ことがいっぱいで、この時代にここまで行動を起こした白蓮と言う女に、驚きを越して感動すら覚えた。





子盗り 海月ルイ 文藝春秋社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 京都北部の名家に嫁いだ美津子は、子どもが出来ないために姑や分家からのプレッシャーに耐えられず、ある決心を・・・。
感想 ここに出てくる女性4人。
一人は子どもが出来なくて苦しんでいる美津子。
一人はその美津子に執拗な嫌がらせをする姑クニ代。
一人は子どもと離れざるを得なくなった看護婦の潤子。
そして、現実逃避の末に子どものまま大人になったようなひとみ。

それぞれの女性に視点を変えて、どの人物の内面も深く描いてあり、読み応えがあった。
主人公の美津子には同情を禁じえなくて、あまりの風当たりの強さにこちらも冷え冷えとする。
最後まで、一気に読めるスピード感もあり、せつないラストに涙。
ネタばれ感想↓
最初は、美津子に同情して姑のクニ代を憎たらしく思いながら読んだけど、最後まで読んだら、姑さんがかわいそうにもなった。
いや、ほんとうにかわいそうなのはもちろん、美津子なんだけど、クニ代はクニ代で、本家の「母」と言う立場でプレッシャーがあったんだろうな。
だからと言ってもちろん、美津子に言った数々の心無い言葉を肯定するつもりではないけど、ラストの切ない成り行きは涙なくして読めないって感じ。
「アナタも苦しんだのね」と思ったのは、もう既に私が「姑」根性だからでしょうか?(苦笑)





陽炎の島   天厩五郎  朝日新聞社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 数年前、妻子を事故で亡くした水城は仲間と一緒に秘密カジノの売上金3億円を強奪する。借金を返したあと、ルポライターの仕事で台湾へ飛ぶが、そこに待っていたものは台湾の先住民族たちの秘密だった。
感想 先日、美母衣ダムをはじめて見たばかりだけど、その大きさに驚いた。
このストーリーは、そのダムのそこに沈んでいる村にまつわる数奇な運命の持主たちを描いたものである。
うそか本当か知らないけど、ここに住んでた住人は台湾から、日本政府によって移住させられた民族で、手厚い保護下に置かれていたらしい。
それはなぜか?
なんでも、この台湾の「高砂族」と言う人たちは、ある特殊な体質を持っていて、その研究のためにそういうことになったそうだ。

戦争中に日本が植民地支配をしたのは朝鮮だけでなく台湾もだった。と、そう言えば教科書には載っている。そう言えば・・というのは、まったく失礼極まりない発言だけど、そういうことってあんまり詳しく教えてもらっていないと思う。むすめの教科書を見ても、朝鮮も少しだけど、台湾の侵略の事は一言ぐらいしか書いていないのだ。
本書を読んでいると、戦時下に日本が台湾の人たちをどのように扱ったかが書いてあり、またまた胸が締め付けられる想いであった。
ストーリーも、ダムができる前の、奥美母衣に住む台湾からの移住者たちの当時の物語と現代の, なぜかその秘密に巻き込まれていく主人公のストーリーが交錯して、最後に明かされる真実まで一気に読めた。
でも、もう少し、その民族全体の姿が見たかったと思う。





感想





満足度
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★★★★
あらすじ
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