2003年の読書記録*7月



傭兵ピエール  佐藤賢一  集英社文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
100年戦争の末期、フランスに現れたラ・ピュセルこと、ジャンヌ・ダルク。
神の声を聞いたものの、その実態はいたいけな少女だったジャンヌ。
そして彼女に恋をして、その身を守った傭兵部隊のシェフ、ピエール。
混沌のフランスを生きる二人の出会い。
感想
面白かった〜。
ピエールがとっても魅力的に描かれていて、惚れそうになった。
荒くれたち傭兵を率いていく魅力あるカリスマ性。
その行動力と大胆な決断力。
「ついていくぜ!シェフ!!(団長のこと)」と、皆に慕われるのもうなづける。
それなのに、女にはちょっとだらしないあたりが物語をますます面白いものにしているだろう。
個人的にはもっと、ストイックな方が好きだけど・・。
傭兵部隊の個人個人や、関わった女性たちもみんなリアリティ豊かに描かれていて、好感を持てた。
特にストーリーでも大きなヤマとなるのが、弟分のジャンとのくだり。
ピエールを兄と慕うジャンとの絡みは、時にはほろりとさせられた。私が一番好きな部分だ。
なんとなく、「プライベート・ライアン」のミラー大尉を彷彿とさせられたけど、こちらは部下を思うほかにも、自分が今まで人を殺してきた事を悔いる気持ち「おのれの罪に胸いためる」様が良い。
肝心のジャンヌだけど、割りと陰が薄かったかな?
でも、新説ジャンヌ・ダルク・・という感じの斬新な結末で、ビックリさせられた。

この本は、PAGEONE の管理人ラムちゃんから貸していただきました。ありがとう^^





クラウディア最後の手紙  蜂谷弥三郎  メディアファクトリー
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
第二次世界大戦後、朝鮮で暮らしていた「私」は、スパイのヌレ衣を着せられ、ソ連に拘束されなんと51年もの長期にわたりそのままソ連での暮らしを余儀なくされた著者の人生。
感想
クーのお母さんからのお勧めです。ありがとう^^

なんと、酷い事があったのか。
51年ですよ、51年!
身に覚えのないスパイの容疑でソ連に抑留する事51年。
生き別れた娘さんはまだ生後8ヶ月だったのだ。
心中は察して余りある。
拷問や酷い扱いに、果ては病気になり体も不自由な所が出てきたりして、著者もあきらめかけて、自棄になり、死んでもいいと思うようになる。
が、それから立ち直ってからが著者のすごい所。
生への前向きな執着心が、感動的だ。
マイナス30度から酷い時では80度と言う極寒のシベリア。
ひたすら日本に帰ることを夢見て、一生懸命ひたむきに生きる姿が胸を打つ。
日本に帰った時のために、日本語を忘れないように和歌や、教育勅語をそらんじたりする著者の努力と気持ちにも感動した。
教育勅語・・その精神こそが日本を戦争に導いた礎のひとつであったろうに。その矛盾にも切なくなった。
どんな目にあってもあわされても、人を疑わず自己中心にならず、人のために働き尽くす著者とクラウディアさんのふたり。
どんなに尊敬してもし足りないくらいだ。
最後は祖国日本に帰る事ができるのだけど、はたしてそれが幸せなのか?
二つの国に引き裂かれた著者の心が痛々しすぎた。






人びとのかたち  塩野七生  新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 新作あり、クラッシックありの、塩野さん流CINEMAエッセイ。
感想
この本も、PAGEONE の管理人ラムちゃんから貸していただきました。ありがとう^^

こちらも、CINEMA好きなので楽しく読めた。
しかし、すごい映画の量だ。さすがである。
所々往年のスターたちの写真がアップしてあり、目を奪われながら読んだが、昔の女優さんの美しさってどうなんだろう?
モノクロの写真だからかな?エヴァ・ガードナーなんて神々しいくらいだ。
塩野さんの語り口でトントンと色々な映画を紹介してあるが、私がその中でひとつだけ取り上げるとして「8月の鯨」にしてみたい。
これを私が見たのはもう、かなり前だ。まだ、ビデオが出たばかりの頃だったかもしれない。ということは10年以上前と思う。
当時はこの映画を見てもじんわりと感動はしたものの、じつのところお年よりの映画なので進み具合がまだるっこい、という感想だったように思う。
今、塩野さんの感想を読むと、これを見ている間中塩野さんは泣いていたそうだ。
「年を重ねると言う事は、できることが見えてくること」
と、塩野さんは言う。
私も「年をとるということは、できることが一つづつ減っていく」と思う。
この前まで運転していた人が、家族に運転を止められたり。
その切なさが分かるようになった今、この映画を見たら私も塩野さんのように終始泣いているのかもしれない。





廃用身 漆原糾/矢倉俊太郎:共著 山月館
満足度
お薦め度
★★★
あらすじ
廃用身、これはれっきとした医学用語で、麻痺などで回復の見込みのない身体の一部(手や足など)を言う。
著者の漆原糾氏は、これを切ってしまう事で老人医療と介護に明るい未来があると説く。
感想
いや、怖い本でした。
手足を切る事が、明るい未来に繋がると言うのは、一見するととんでもない事のように感じるが、この著者はまじめに考えているのだ。
そのことも含めて大きな問題提起になっている。
介護の力と言うのが、限りある資源であると考えるなら、どうにかしてそれをもっと有効に使い、老人たちの未来にも明るい光を・・しかし、それは果たして現実的なのだろうか。

ホラーとして読むか?
それとも、医療問題にメスを入れたヒューマンドラマとして読むか?
それは読者によって分かれるところだろう。

以下ネタばれ↓
実は、これ「幻冬舎」の本で著者は「久坂部羊」氏である。
まぁ、だますつもりで書いたのか知れないけど、私はあっさりだまされてしまった。
まるで本当にあることのように書いてあり、最初は「小説だと思ったけど、手記とルポやん!」と、思った。
奥付を見てもちゃんと、漆原と矢倉の略歴まで出ていて、手が込んでるというのか。
最初は、「いらない手は切ろう」という、考え方のドクター漆原の手記がおかれていて、これがまた本物っぽいのだけど、その手記が終わり、編集者の矢倉の書いた文のところで初めて「なんやーフィクションか」と、分かった次第。
正直な感想というと、最初はノンフィクションと思ったものだから圧倒されたけど、フィクションと分かってからはちょっとヒートダウンしたかな?と言う感じ。
ホラーかヒューマンか・・
どっちつかずになったのではないだろうか?
まぁ、一気読みはしたけど。
あまりにも、グロすぎて私でも気分が悪くなったし。
スプラッターではないんだけど。
老人介護という問題自体、実際に身近になりつつある大変重大な問題なので、余計に物語だけと割り切る事が出来なかったと思う。





チェーザレ・ボルジア
 あるいは優雅なる冷酷   塩野七生 新潮文庫
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 16世紀に生きイタリア統一を目指した当世一の美男子、チェーザレ・ボルジアの生涯。
感想
ラムさま、所蔵本。貸していただいた。ありがとうです^^

ややこしい〜!
まず、これが第一の印象。
当時今のイタリアは、大きく分けても「ミラノ」「ベネツィア」「フィレンツェ」「ナポリ」と、別れておりそこに、小国を合わせるととてもとても、今のイタリアと言う一つの国とはまるで違う姿だった(ようだ)
それを初めて「イタリア」として「統一」しようと野心に燃えたのが、当時の絶対的な権力を誇るカトリック教会の枢機卿であった、若き主人公である。
彼のニックネーム「毒薬使いのボルジア」
歴史的にも、冷酷で残忍、おのれの野心のために平気で身内をも毒殺すると言う、評判のチェーザレの、塩野さん的に見た「真実の姿」が、描かれている。
ここに描かれたチェーザレは、野心家と言うだけではなく、頭脳的にも優れ決断力や行動力、どれをとってもすごい武将である。
しかし、私が一番面白いと感じたのは、マラリア熱にかかってからの彼の姿だ。
彼は自分の野望に向けて、破竹の勢いで快進撃を続けていたのだが、マラリア熱で父法王が死んでしまい、自分も瀕死の重体になると、それまでの勢いがぴたりと止まってしまうのだ。
それまでの勇猛な姿から見たらあまりのギャップに、悲壮感が漂う。
それでもなんとか、思いを遂げようとあきらめずにがんばる姿も痛々しいほどだ。
その生涯のあっけない幕切れは、この小説を読む人すべてに惜しまれるだろう。
マキャベッリやレオナルド・ダ・ヴィンチという、歴史上の大人物との接点も興味深かった。





戦場のピアニスト  ウワディスワフ・シュピルマン  春秋社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ 同盟映画の原作で、ホロコーストを生き抜いたピアニストの手記
感想
本書を読んで、映画の衝撃が蘇った。
でも、映画はもっと主人公が「動物的」だったような感じだったが、原作では案外冷静で理性的なのだ。
まるで、針の目をくぐるようにして命を永らえていく。
何度も何度も「もうだめだ」「今度こそ終わりだ」という恐怖にさらされながらも、人間的な理性を失わずに生きていたすごさを、文字を通して改めて実感した。
そして、私がどうしても、この手記を読みたかったのは
 以下 少しだけネタばれです。

この主人公を助けたドイツ将校の手記がついていると知り、読みたいと思ったのだった。
映画では、まるで偶然気まぐれのようにシュピルマン氏を助けたような印象だったが、このドイツ将校さんはほかにも何人ものユダヤ人やポーランド人を助けており、手記を見る限りナチズムへの徹底的な反発を持っていたようだ。
この人が、戦争が終わり、ロシアの捕虜となって、最後まで、自分を助けてくれる「誰か」を、探して探してかなえられずに、ついに絶望のうちに死に至ったと知り、やりきれない想いだ。
このシュピルマン氏も、どうにもしてやれなかったと言うのがどうにも残念だ。
もっと何とかできなかったのか?
しかし、シュピルマン氏もそのことで悔恨の中で生きたと思う。
そういえば、シンドラーさんも不幸な晩年を過ごしたような・・・。

こうしてナチスドイツのしたことを思うと暗澹とするが、中には「ドイツや広東軍(731部隊)のおかげで医学が目覚しく進歩したのだ・・だから、一概に否定できないのだ」・・などという輩がいるのはとっても、言語道断。
人が人の命の尊厳を踏みにじるような、それがあたりまえのような、そんな時代が二度と来ないで欲しいと思う。





星々の舟  村山由佳  文藝春秋
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
両親、長男、次男、長女、次女、そして、長男の娘と、それぞれのエピソードからなる連作短編集とも言えそうな一冊。
禁じられた恋愛が、随所に盛り込まれた衝撃作品となっている。
感想
村山さんはさわやかな作品を書くという印象があるのだけど、実はどの作品も結構恋愛はドロドロしてるし濃厚な性描写がある。
多分私はこの人が描く場合、男性を主人公にしたほうが入り込みやすいように感じる。
特に、私が感動したのは、最後の章の父親の思い出だった。
これを読んで私は自分の母方の祖父を思い出した。
「上官が『(敵を?)突け!!』と、言うんだ。突きたくないのに・・。」と言って泣いていた祖父。
「時代に流されるだけで、戦争に反対しなかった国民も罪がある」と、若い人が言うと言う。
でも、その時代に生きてその時代の空気に触れなければ分からないこともあると思う。
従軍慰安婦の問題も、人によっては「イツまで言ってるんだ」と言う意見もあり、日本ではまだまだ問題解決には程遠い。
それを、真正面から見据えてここまでの作品とした村山さんはすごい!
実は最終章は、唐突に「戦争問題」になっていった感じがした。
ほかの章から浮いてる感じ。
でも、私にとってはこの章が一番感動したのだった。
ちなみに、本作は2003年上半期直木賞受賞。
偶然にも、賞をとったすぐ後で順番が回ってきた。





バトル・ロワイヤル2 鎮魂歌  杉江松恋/太田出版
満足度
お薦め度
★★
あらすじ
一大センセーションを巻き起こした前作の続編
今度のターゲットは前作の生き残りにして、テロリストと成り果てた(?)七原秋也だ。
秋也を殺せばゲーム終了。
選ばれた鹿の砦中学3年B組の面々は???
感想
ん〜〜〜〜
こういうのは、先にだしたもの勝ち、みたいな。
前作は設定の「とっぴさ」と言うか、発想の勝利みたいな所があったんじゃないかと思う。
その続編となると、どういうふうに前作とストーリーを違えてくるのかが、作者の腕の見せ所だろう。
今回新たに、生徒たちの「タッグマッチ」と言う形で、二人一組になり、どちらかが死んだら自動的に片割れも死ぬ・・と言う設定などは、目新しい所かな?と思うが、前作はシンプルにして迫力あり、だったのが、今回は複雑になりすぎてストーリーが散漫になり深みが消えた・・と言う感じかな?
生徒が42人、と言うだけでも個別にインプットできないと言うのに、そこに今回は、前回の生き残りの七原たちの「ワイルドセブン」などの、レジスタンス?グループまで出てきて、とにかく人が多すぎたと思う。私だけ?(笑)

なおぞうさんからわざわざ送ってもらったんだった。
こんな感想でごめんね!なおちゃん(笑)
でも、息子は喜んで読んでいたよ^^
ありがとうございました!






フォレスト・ガンプ 一期一会   ウィンストン・グルーム/講談社
満足度
お薦め度
★★★★
あらすじ
同名映画の原作。
知能指数70ほどのフォレストの冒険にとんだ半生。
感想
映画は皆さん、ごらんになりましたか?
これって、コメディでしょうか?
ともかく、面白かった。愉快な話だった。
次々と目まぐるしく、環境が変わっていく様は「わらしべ長者」を思い出した。
どこでも、けっこう成功していくなんてちょっとうまく行きすぎだろう、と思ったけど、なんか主人公を応援していて目が離せないんだよね。
私が特に面白かったのは、宇宙に行く時にいっしょに乗り込んだオランウータンのスーだ。
本では、オランウータンとフォレストは意思疎通できて、オランウータンが自分の生きて越し方を、とうとうと語ったりするのだ。
これも、映画にあるんだろうか?もしもそうなら、バレーボールのウィルソンと言い、トムハンクスの友達って、人間じゃないのが多いような・・・(笑)
うまくいきすぎだよー・・と、思いつつ、引き込まれて一気読み。
おもしろうございました。

貸してくれたのはラムちゃん、ありがとうね♪