2003年の読書記録*9月



ダレン・シャンV バンパイヤ・クリスマス/ダレン・シャン
小学館
ついに、3巻目。
ダレンは、何事か計画があるらしいクレプスリーに連れられて、シルク・ド・フリークを離れ、都会へ行く事になった。
大親友の蛇少年エブラも一緒だ。
夜な夜な謎の行動をとるクレプスリーが、気になりつつも、その街でダレンはある友達を得る。
新しい町、新しい友達。
そして、新しい?敵?
クレプスリーの目的はなんなのか?
どきどきの3巻だった。

さて、ここに出てくるダレンの新しい友達は、蛇少年をまったく特別視しない。
もちろん、最初は驚く。なんせ全身うろこに覆われているんだから。
でも、それだけ。
ほんとうに、驚くだけなのだ。
頭が下がる想いがした。
そして、宿泊先のホテルでは、奇妙な行動をとる人間がいたりして、蛇少年のエブラが言う。
「シルク・ド・フリークよりも人間の方がよっぽど変わってる」
そんなちょっぴり、ブラック?なユーモア。
実は、手塚治虫氏の「ドン・ドラキュラ」という漫画の主人公のドラキュラ氏が、ホラー映画を見て怖がり「人間はなぜこんな怖いものを見るのか」というようなことを言うのだけど、それを思い出した。
人間って、どんな怪物よりも「化け物」なのかもしれない。
ダレンの息詰まるような戦い、そしてクレプスリーとの関係、切ない初恋物語が見ものの3巻。
いやいや
子どもだけに読ませておくのはおしいよ。



ダレン・シャンW バンパイヤ・マウンテン/ダレン・シャン
小学館
はいはいはい。
4巻目です。
時は流れて6年後。ダレンがバンパイヤになってから通算では8年目ぐらい。
大親友だったエブラは、年を重ねて少年から青年へと成長したのに、ダレンはまだ2年分も年を取っていない。少年のままだ。その事が、二人の間をちょっぴり疎遠にしてしまったようだ。
ちょっぴり寂しさを醸し出して始まる4巻目。
バンパイヤ・マウンテンで行われるバンパイヤ総会に出席するために、ダレンはクレプスリーと二人のリトルピープルと出かける。
過酷な道中を乗り切って、到着したバンパイヤ・マウンテンで待ち受ける、これまた試練。
何もかもが新鮮で、驚きの連続のバンパイヤマウンテン。
意味のない掟にとらわれたり、種類がわかれて戦争?になったり、バンパイヤの世界も人間世界と変わらない。
でもそれだけじゃなくて、いろーんなバンパイヤたち。これが個性豊かで面白い。
それぞれみんな個性的。
柄は子どもだけど、内面的には強くたくましく成長していくダレンに、読者は釘付け。
そして、長年の時を経てはぐくまれて行くクレプスリーとの、友情というか、師弟愛と言うか。これも目が離せない。
さて、この続きは・・。
今回とても、気になるところで終わってて、どうしても、続きが読みたい〜!!



疾走/重松清★★
 角川書店
ともかく話題の本書、なぜか(?)トラキチさんからまわしていただいたので、読みました。
回していただかなかったら読まなかったでしょう。
話題のとおり、ともかく重く暗い。
なんでこんなに重暗いんだー!と、叫びたくなるほどに。
でも、「重松さん」の作品と言う感じはあんまりしなかった。
って、あんまり、重松作品を読んでいない私が言うのもおかしな話だけど。
重くて暗い作品は、数々読んできたが、心に何か「響く」物が残るかどうかによって、その作品が「よかった〜(ジーン)」か「暗いだけだった・・(汗)」かに分けられると思う。
本作は、残念ながら私には心に残る物がなかったように思う。
そもそも、2段構えで500ページ近くあるのに、そこに描かれている年月が「5〜6年」という短さにも原因があると思う。
長い割りに、話の進展がまだるっこいといえばいいか。
その分丁寧に主人公の内面や展開が描かれてると思うが、却ってそれがいらいらさせられると言うか。
読んでてその鬱屈っとした雰囲気にやられてしまい、気力を持っていかれる。
実際寝転んで読んでた時(ごめんなさい〜)起き上がれなかったもん。
ただ、この物語って「人ごと」って割り切るわけに行かない。
いつ何時、自分の家族に犯罪者が出るか分からない。
それによって、道連れになる家族のその後の厳しさ・・それはよく、伝わってきた。
もう怖いほどに。
ここに、すごく面白いミステリー的な謎解きがあるとか、最後に救われるようなオチがあるとか、前向きに生きていくチカラみたいなのを感じ取れるとか、なにか期待したいよねぇ。読者としては。って言うところでしょうか。
ごめんチヤい!!



玄治店の女/宇江佐真理★★★★★
玄冬舎
江戸中期、玄治店(げんやだな)の通りには、粋な妾宅が軒を連ねていた。
小間物店「糸玉」を営む、元花魁のお玉もその一人。
その気性から近所のお喜代(辰巳芸者)小梅(芸妓屋の跡取娘:8歳!)お花、おまさなど、皆から慕われる「あねさん」的存在。
お妾さんといわれる人たちが、仲良く自分に正直に一生懸命生きている玄治店の四季を叙情豊かに描く秀作。
図書館で借りました。たまたま。
時代物って苦手意識があったんだけど、すごく良かったです。
昔の人たちが生きてるようすって、それだけでなんかなごむ気がする。
のんびりしていて、風情があるからかな?
湯屋で背中を流し合う場面や、お玉の店に寄ってきてはいろんな愚痴や相談を持ちかける場面など、情景がフワーッと思い浮かぶ。
「姉さん」と慕っては(誰かとは違って本当に面倒見がいいんだー、このお玉さん)お玉のところに集ってくる女たちも、みんな「日陰の身」
そこに登場するのは、若くてハンサムで朴訥な師範代のバイトで食いつなぐ、浪人の青木某。
この人との恋愛がまた、切なくていい感じ!!
かたや今は浪人でも、将来は有望な若い武士。
かたや、いまはだんなと切れたと言っても元は花魁の中年(と言っても、まだ29なんだよ!)
年上で、世間や男を知り尽くしてるようなお玉にとっては成就する可能性もない恋だったが、青木はその若さと生真面目さでぐいぐいと迫ってくる。
ううー。なんて羨ましい。(笑)
今だったら、何をかたっ苦しい事言ってるの?好きならそれでいいじゃーん!なんて言うとこだけど、昔はそうはいかなかっただろうね。
そのじれったさが醸し出す切なさ。
これこそ、時代物ならではの醍醐味だろう。
ここからちょいネタばれ。↓
最後に青木は、伊勢の国は津へ(ようこそ〜♪)旅立つのだが、物陰からそれを見送るお玉の姿のいじらしさ切なさに、もうこっちまで泣けました。
そのご、おゆりさんの話を聞いて気持ちを通わす場面もすごく良かった。
お喜代や小梅との別れに涙しつつも、青木の元へ「早く早く!行きなさい!!」って気持ち。
なんで、二人が再会する所まで書いてくれなかったのかな?とも、思ったけど、でも、あの終わり方だからこそ、きっと「二人はしあわせに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」って自分の中で完結できるのだろうな・・。



ダレン・シャンX バンパイヤの試練/ダレン・シャン
小学館
いよいよ、5巻です。
4巻からの流れで、この巻ではダレンが試練というのを、受ける事になってます。
本来、バンパイヤたちが、バンパイヤ将軍になる時に受けるのがこの試練。
それが4科目あり、すごく辛い内容なのだけど、果敢にそれに挑む様子が描かれてます。
うまいこと、ハラハラドキドキさせられてしまった。
オトナでもそうなんだから、子どもならなおの事ドキドキして読むんだろうな。
しかも、この終わり方がまた半端じゃなく、続きが気になる。
今、娘に「お友達から借りてきてよ」と、交渉中。

あとね、本に「ダレンシャン・ジャパン」という、新聞のような折込チラシのような、ファンの広場みたいなものが付録があるのだ。
感想の投稿あり、自分の思い描く登場人物のイメージイラストあり、結構面白い。
みんな、絵がうまいよ。



永遠の咎/永瀬隼介★★
光文社
発端はある殺人事件。雪の深夜、場末のバーで同じ会社の同僚同士の殺人事件が起きる。
月日が流れて、数年後。
新宿の無認可ベビーホテルに集う人たち。
ヘルスで働く聖子、ホストをしながら男手一人で子どもを育てる貞夫、そして綾乃もその一人。
ホステスをしながら死んだ夫の忘れ形見を懸命に育てている。
ある日、綾乃の元へ夫・時任を殺した轡田から、「時任の位牌の前にぬかづきたい」という手紙が届く。そのとき、ベビーホテルでは聖子のあかんぼうが、事故で死んでしまうという事件が。

正直言って、面白くなかった。
理由の一つは、どの登場人物にも感情移入しにくいということがあるだろう。
はっきり言って、誰もが嫌い。
ホストの貞夫などの人生は、結構興味深く描かれていたがそれでも、あまりの覇気のなさにちょっとげんなり。
サポートなしに子どもを育てられるのか?という疑問は置いとくにしても、赤ちゃんのときから二人で1年半以上?もやってきたなんてちょっと説得力不足。
ただし、ホストクラブの内部の派閥や人物関係は面白かった。
主人公の綾乃にしても、読者的にも近寄りがたい感じで入り込めない。
ストーリーといえば、(ここからネタばれで↓)
中途半端な印象が否めない。
最後に、冒頭の殺人事件の真相が明らかになるんだけど、その真相がこじんまりしてる。
ここまで引っ張ったからには、すごい真相があるんだろうと、読者は思うでしょ?
虐待死や無認可ホテル内での子どもの死亡事故なんて、すっごく興味をそそられる内容なんだから、これをもっと深く追求してミステリーにして欲しかったな。
さて、タイトルの「永遠の咎」ですが
綾乃は長女を実は、虐待で死なせていたので、その咎を背負っているのため、今の子ども(死んだ長女の弟・本作中は2歳足らず)とは二度と会えない、ということなんだけど。
単純に物申す!
死んだ子どものことを考えたら、そういう気持ちになるのは仕方ないが、そのために「今生きてる子供」を捨てるというのは、いかがなもの?
それでは、子どもがかわいそう。同じ立場にたってないから分からないけど。
咎だか、なんだか知らないけど、それは独り善がりの自己満足ではないのか?
罪に生きる振りをして、罪から目をそらしてるよね。
自分の犯した罪と対峙して、時としては自分を許せる「強さ」を持ってほしいですね!



証拠死体/P・コーンウェル★★★
講談社文庫
無残な死体は、それだけで証拠となる。死体は語るのか。
それを、読み取るスカーペッタ。
なぜ、ドアを開けたのか?
死体についていた「オレンジの繊維」は一体なんなのか?
原稿は何処に消えたのか?
売れっ子女流作家の死の真相に迫る!!
今回は、ケイの昔の恋人がなんだか、怪しげに登場して ケイの心をかき乱す。
そしてさらにそれを攪拌するマリーノ。
終盤までは面白かったんだけど、犯人像が見えてきたときちょっと、拍子抜けしたかな?
冒頭のショッキングな事件のキーワード「なぜ、被害者はドアを簡単に開けたのか」この疑問に対する答えが、ちょっと期待するものと違ってしまったかも。

ただ、これはただの推理小説というよりも、ケイという検屍官の内面描写がみごとで読み応えがあると思う。
マリーノとも信頼関係が出来上がっていて、誰よりもお互い尊敬しあっている(実は)でも、それを素直には表現しないぞ!!という、変な意地。それもおもしろい。こういう関係好きです。恋愛関係には決して発展しそうにないのが残念だ(笑)



タイトル/作家
小学館
文字