2004年の読書記録*2月 |
幻夜/東野圭吾★★★★★
集英社
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一気に読んでしまった。 「白夜行」の続編だそうだけど、そっちを正直あんまり覚えておらず、多分しっかり記憶に留めてから読むのと比べたら、面白さは半減かな?と思うが、それでも文句なしに一気読みだった。 私としては一気に面白く読んだんだけど、やはり、美冬が「悪役」的存在で許せない!!。 で、それを暴こうとする加藤刑事にはこころから「がんばれ!」って声援を送りながら読んだ。 なんと言っても、かわいそうなのは雅也だった。 「利用されてるだけだよ、目を覚ませよ」と、思うんだけど、本人気づかないのでじれったい事。 私は、食堂の女の子がもっと、突っ込みすぎて殺されないかとっても、心配だったが、あの子が無事でよかった。 しかし、加藤刑事はやっぱりねぇ・・。 このままじゃ、ちょっと納得できないので、この続編で美冬に「天網恢恢・・」ってやつ、東野さん、よろしくお願いします!と言いたい。 それにしても、美冬は何所に行って何をしようとしてるのか? 彼女の最終目的は何なのか? これが、整形に整形を重ねて、アンチエイジ的美の追求・・だとしたら、なんか、怒れる。 もっとすごい事考えてるんだよね?ねね? |
目撃/深谷忠記★★★★
角川書店
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夫が何物かに殺害されて、その容疑者となってしまったその妻、夏美。 じつは、その時間には確たるアリバイがあったのだが、二人の通りすがりの人間から殺人の時間に現場の近くでの「目撃証言」をされたために、起訴され一審では有罪判決。 控訴審での逆転をかけての弁護士朋子の活躍・・・。 判決はどうなるのか?? 朋子がたよったのは、作家の曽我。 曽我にも「母親が父親を殺す場面を目撃した」という、妻にも隠している過去があった。 この作家と、朋子という弁護士を通して事件の行方を追いつつ、人の「記憶」というもののあやふやさ、頼りなさを明らかにしていく。 「目撃証言」に頼る事の、危険性を丁寧にじっくりと読ませられて、とっても読み応えがあった。 しかし、弁護士さんというのはこのように、刑事顔負けの「捜査」「推理」をしなければならないのかな。 そして、弁護士のほうが真実に近づくと言うのなら、警察は一体何をしてるの?と思うのだけど・・。 |
白光/連城三紀彦★★★
朝日新聞社
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幸子は4歳の娘・直子を姉の聡子に預けて、カルチャーセンターに通う振りをして不倫していた。 それを快く思わないままに、断りきれずに直子を預かる聡子。 聡子の娘を歯医者に連れて行く間、直子を家に舅とふたりで残しておいた。 そして事件が・・。 聡子、幸子、舅、聡子の夫、幸子の夫・・・それぞれの心の奥深くある「本当の気持ち」を薄皮をはぐように明らかにしながら物語は「犯人」と「真実」と「動機」に近づいていく。 一見、仲良く見える姉妹でも、心の奥を覗いて見たら?・・という、ちょっとしたサイコサスペンスになっている。 誰が、本当は何を考えているのか、だんだんと分かってくるところはドキドキしながらも、ぞくっとさせられ、読んでいて引きこまれる。 ひとつの事に対して、考え方感じ方は百人百様というか、真実も本当は100通りあるのかもしれないと思わせられる。 文章全体にねばっこい雰囲気がまといついていて、それは日本人の持つ独特の陰湿さのような・・。 登場人物たちも誰もがみんな粘っこい考え方で、「ほんとの事さっさと言いなさいよ」というじれったさのような物が常にあった。 ラストはやり切れません。 中盤までとっても良かったが、あまりにラストが辛すぎて、★をひとつ減らしました^^; |
赤い月/なかにし礼★★★★★
新潮社
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戦争中満州に渡り、関東軍の肝いりで成功した造り酒屋の森田一家が敗戦と同時にほうほうのていで逃げる様子を描いた迫力の一編。 子供たちを守るためにも「死んでなんかいられない」 そのためには愛する事が必要、愛がなくては生きられない。 たとえ、それが夫を裏切る事になっても・・・ そんな波子の独特の生き方は、ひたすら力強く、しかし何よりも自己中心的だ。 波子の生命力によって生かされる子供たちだけど、そのために深く傷ついてもいる。 特に涙を誘うのは年頃の長女だ。 思春期というとただでさえ、大人が汚く見える時期。 それなのに、こんなにも「母の不貞」を目の当たりにして、この後大丈夫だったんだろうか? 引き上げの汽車の中で、人のために働いた軍人にいだいた淡い恋心が涙を誘った。 しかし、理屈はどうあれ、理想はどうあれ、波子の奔放でありながらも自分に正直な生き方に釣り込まれ圧倒された。 そして、最後にたどり着いたのは、そんな波子をも打ちのめす、日本の「戦争」「満州」「日中戦争」の「真実の姿」 なかにし礼氏が描きたかったのは、自分の母のことであり、そして、この日本が犯した国を挙げての「犯罪」への告発だったのではないだろうか。 初めて、その戦争の真実の姿を見て 愕然とした。 日本人でいることが、恥ずかしくなる。 そりゃ、アジア諸国にうらまれても当然だよ・・。 この戦争で死んでいった人たちのことを思うと居たたまれない。 国策にしたがって満州に来ただけなのに、罪があるのか? と、問う波子に、氷室が言う。 「日本人全体が中国人にとっては憎んでも憎みきれない加害者なのだ」と・・。 過ちは繰り返してはいけないと思う。 せめて、それぐらいは考えよう。 それにしても、波子41歳!! なんと、私と同じ年である。 それでいて、17歳年下の男に恋をして、「なびかせる自信満々!!」なのだ!! とてもとても、同じ年とは思えない・・。 16歳のころから、軍人の恋人を持ち(結婚は考えず)夜な夜なダンスに興じる。 結婚しても、子供を産んでも、夜な夜なダンスホールに行くのはやめない!! こんなこと、今であっても「ヒンシュク物」と思うのだけど(いや、上流社会ではありなのか??) それが、また、戦争中のことだったんだから・・押して知るべし。 すごい女である・・波子・・。 |
ストライプ/仁尾智・森下雨音★★★★
市井社
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ゆっこさんから送っていただいた五行歌の歌集です。 ゆっこさまありがと♪ 普段、お友達サイトの五行歌も見せていただいてるけど、こんなにも直截的な「キス」だとか「はじめての朝」だとか、そういう類の歌はないので、かなりドキドキしながら読んだ。 普通の文章よりも却って、想像を(妄想?)かきたてられたりして・・。 五行の言葉の羅列なのにストーリー性があるのもすごい。 五行の後の六行目七行目も、こっちで想像したりしてそれも楽しい。 この歌集は男性のさとるさんと、女性のあまねさんが共同執筆。 見開きの右側にさとるさんの五行歌がゴシック体で書かれてて、左側にはあまねさんの五行歌が明朝体で書かれてるのだ。 そして、各章ごとのテーマに沿って、また、ひとつひとつの五行歌もそれぞれ、サブテーマがつけられてるようによく似た題材で書かれてるのが分かる。 そのテーマは明記してないのでこちらが推察するしかないのだけど、同じテーマでも男女(というか、ご両人)の生み出す歌の違いが興味深い。 あまねさんの歌は、その場の風景がふわーっと映像を伴って浮かび上がってくる・・そして、歌の中の彼女に共感したりほろりとしたり・・。 それからじつは、さとるさんの歌の中にある「じゃあ聞くが・・」「・・・って話だよ」などの言葉使いが妙にセクシーで(照)「男」を感じてしまった・・・・。 そして歌を読むだけでちょっとときめいてしまった。なんか、自分に語りかけられてるみたいで・・。あはは・・(笑) 「ストライプ」読んだあとは なんとなく人恋しくなったりして しかたないので いつもよりだんなに 優しくしたりしてね って感じの読後感でした!!(お粗末(苦笑)) |
看守眼/横山秀夫★★★★
新潮社
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表題作を含む5編の短編集。 短編だと、まぁおもしろかった!で終ってしまう事が多いけど(どっちかと言うと、長編のほうがすきかも知れない)これはかなりよかった。 1篇1篇丁寧に作られていて、どれも引き込まれるように読めた。 女性を主人公にしたものもあったけど、女性の視点と言う部分でなかなかに読ませられた。 特に好きだったのは「秘書室の男」という、奥付を見ると最新の小説。 じわーんと、泣ける個所もあり心に残った。 表題作の「看守眼」は、最後「そうくるか!!」という・・。 とっても切なくなって、上質の映画を見ているような感慨があった。 上記2編は★★★★★です。 のこりは、★★★〜★★★★の間ってとこかな。 ひさしぶりに、短編集で満足させてもらった。 |
マクダレンの祈り/★★★★
ソニーマガジンズ
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ある修道院の中で行われたものすごい虐待・・・というイメージで読んだので、ちょっと拍子抜けしてしまった。 というのは、これはもっと真面目なノンフィクションだったのだ。 (どんなのを想像していたの?って感じですが) 著者は、看護婦であり、ある末期の結核患者のケアをしていたのだがデートの時間もなく結核菌に感染することへの恐怖もあったために「夜勤なし」と言う触れ込みの「マクダレン修道院」への転職を決めたのだ。 しかし、夜勤なし・・と言う事はすなわち「24時間体制」とも言えるかえって過酷な労働条件のごまかしでしかなかったのだ。 そして、そこは間違って妊娠してしまった少女たちの「監獄」のようなところだった。 あまりにも非人間的は彼女たちへの「シスター」のやり方に憤りを感じながらも自分には何もできないというジレンマと自己嫌悪の中で、せめて自分だけは少女たちに少しでもできることをしてあげようと日夜奮闘する著者のヒューマンドラマ。 未婚で妊娠=大罪・・すっごい大罪であったこの時期の少女たちのなんと気の毒な。 サイダーハウスルールを思い出して、戒律を破る事がはたして何所まで罪なのか・・ちょっと考え込んでしまった。 |
38℃/麻生幾★★★★ 新潮社
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これは「SARS」に襲われた北京での100日間を、著者が沈静化してから現地に赴き、実際にSARSと対峙した医者や看護婦、警官など、インタビューを元にまとめたドキュメント。 すっごくこわかった! ちょっとまえ、エボラ出血熱が世間を騒がせた時「ホット・ゾーン」というノンフィクションを読んだけど、あの時は、エボラ出血熱と言う病気の症状がとても、激しい物だった(全身から出血して死ぬ)。 それに比べたら「肺炎」というのは、いつでも耳にしているなじみのある病気・・と言う感じがあって、正直恐怖感と言うのはエボラの比ではなかった。 ところが、肺炎は肺炎でも、感染ルートもわからず治療方法も分からない、これぞSARS!と、断定できるだけの確たる症状の特徴もなく・・。なので、感染予防の方法も分からないのだ。 そしてもしも感染してしまったら・・・呼吸器系の疾患で死にいたる場合、それを知る関係者が恐れおののくほど苦しいものだそうだ。 ともかく、そんな中でSARSと必死に戦うスタッフたちと北京市の混乱ぶりが人ごとではない。 たとえば、スタッフは「隔離病棟」では防護服を着用してるんだけど、これがSF映画で見る宇宙服のような物。 外気と遮断された防護服の中は、想像を絶する熱さと動きにくさ。そんな中でも注射を打ったりしなければならないのだ。それがどんなに困難なことか。着脱一つにしてもとても難儀で時間もかかる大仕事。 中には感染を恐れて病院を辞めていくスタッフもいたそうだし、家族から「娘を働かせるな」という懇願もあったそうな。 病人は病人で死と向き合う恐ろしさに、スタッフに心理的はケアを求めてもそれに答えるだけの人的時間的余裕がなかったり・・・。 こんな状態で治療しなければならなかったのに、できるだけのことはしようとしたスタッフには頭が下がるばかり。 もしも、日本にもこのウィルスが(いや、たとえ他のウィルスであっても)上陸した時、とても対応できるとは思えないのは私だけだろうか。 北京のように100日で沈静化できるんだろうか? 経験から学んで危機管理に備えるべきだと痛感。 SARSって、今でも根本的な治療方法はないのだ。ただコントロールする方法が分かっただけ。 もっと真剣に考えなくてはならないと思った。 |
パーフェクト・プラン/柳原慧★★★
宝島社
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「このミス大賞第2回」の大賞受賞作品だそうです。 今、世間を騒がすネタが満載で、これでもかっ!これでもかぁっ!!って言うぐらい、次々と登場。 最初は「代理母」次は「虐待」「誘拐」そして「オンライントレーディング(わお!苦手分野!)」「ネット」「ハッキング」「ヒキコモリ」「ボケ老人」「ES細胞で美容整形(最近読んだとこだよ)」・・・ どうだ!! と言わんばかりの詰め込みようでした。 これだけの題材をたったの300ページ強にまとめた手腕と言うのか、やっぱ審査員の眼鏡に叶って大賞を受賞しただけのことはあるのでしょう。(出版に当たっては大幅加筆訂正らしい) でも、わたしにとってはまるで「パノラマのより集め」みたいに感じた。 つまり、あっちのパノラマをみたら次のパノラマみて、お次はこっち・・というふうに中に入らずに外から作られた風景だけを見て流していって、パノラマ館の出口にいつの間にか到着・・って感じ。 なによりも、読んでいて集中できなかったのは「誰が悪人?」ということ。 勧善懲悪だけがすべてではないのは分かっている。でも、この物語に関しては冒頭代理母によって産まれた子供が、引き取られた母親によってひどく虐待されてるのだ。 最初にこういう設定になっていたら、読者としては 「うむ!この母親が悪いやつ!こいつが懲らしめられるのだな、どれどれ、誰がどうやって懲らしめてくれるんだい??」 と、思うのでは? ところが、視点が次々と目まぐるしく変わり、それはそれでスピーディな展開として面白くもあり話題満載で飽きる事がないのだが、肩透かしの連続・・という感も確かにあった。 代理母の問題、せっかく生まれて引き取られた子供がその家庭で虐待を受けてる・・こう聞いただけでも興味深い一つの物語が出来そうでは? そして、羅列されたすべての題材が本当に面白そうなモチーフばかりなのだ。 人間関係もよいし、登場人物も好感が持てる。 それだけに、私としてはとっても残念な読後感だった。 これだけ盛り込みたかったら、上下2段構えで1000ページは欲しいね。 その、懲らしめられるべき育ての母親だけど、つじつまあわせのようにいきなりそういうオチに持っていかれても・・・ちょっと納得できないなぁ・・! 今後に期待大!! |
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感想
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