2005年の読書記録*6月



なんて素敵にジャパネスク 6  後宮編/氷室冴子★★★★★
集英社コバルト文庫






なんて素敵にジャパネスク 5  陰謀編/氷室冴子★★★★★
集英社コバルト文庫






なんて素敵にジャパネスク 4  不倫編/氷室冴子★★★★
集英社コバルト文庫
なぜか、急激に瑠璃姫に嫉妬心を露にする高彬。その近辺には謎の人物師の宮の影がチラホラと。
いっぽう、煌姫が思いもかけない告白をしてくる。それは、高彬と瑠璃姫とをひきはなそうとして守弥が暗躍、自分にその片棒を担がせようとした、ということをこれ見よがしに瑠璃姫に告げ口するのだ。
そこで、瑠璃姫はことの真相を正そうと、守弥を呼びつけるのだが !!!
瑠璃姫と高彬の結婚生活に平安な日々なし?

この4巻は、高彬のトチ狂ったような?嫉妬から始まる。
殿方に嫉妬されるなんて、なかなか気分が良いではないの?
しかも、師の宮が良い男として登場するわ、その師の宮に仕える邦利光もいいおとこみたいで、高彬のライバルだらけの4巻です。
3巻を読み終えた時、煌姫のことを「もっとかき回してほしい」なんて書いたんだけど、まさにそのとおりで、上品な生まれとは裏腹になんて現実的で利害にさとい姫様なんでしょう。こういう人結構好きです(笑)。なんと言っても座右の銘が「うまい話に裏がある」「人を見たら泥棒と思え」なんてね、アンタほんとに、水無瀬の煌姫なんですかい??(笑)
師の宮の正体も徐々に明らかに!次の5巻が楽しみです。
★4つなのは、高彬があんまり出てこなかったからね(笑)出てきてもヤキモチばかり焼いてるしね(笑)



黒笑小説/東野圭吾★★★★
集英社
●もうひとつの助走
●巨乳妄想症候群
●インポグラ
●みえすぎ
●モテモ・テスプレー
●線香花火…ほか全部で13編からのブラックな笑い満載の一冊。

●もうひとつの助走
●過去の人
●選考会―――以上3作は連作になってて、文学賞の受賞にまつわる作家VS編集者、あるいは作家VS作家の心理が巧みに描かれてて面白い。ほんとに選考基準ってこんな感じなのかもね?実際にN賞に何度もノミネートされながらも受賞を逃している著者の痛烈な自虐的な??皮肉(って言っても良いのでしょうか?)がおもしろかった。さすが東野さんの「黒笑」!
●みえすぎ
そもそも、ニオイというのは粒子が鼻の粘膜にくっつく状態をいうのだそうだが(理系音痴につき、間違っていればご指摘ください)つまり、「アレの匂い」も「コレのニオイ」もすべて、その物体の目に見えない粒子が飛んできて鼻の粘膜につくのだと…。深く考えたくない!
しかし、それが「見えない」から救われてるのであって、見えた日にゃぁ。以下略。
●臨海家族
おお〜〜!東野センセ!良くぞ言ってくださった!!待ってました!!
つまり、子供を食い物にして成り立ってる経済の「アリ地獄」。わかります、わかります!!だったらテレビを見せなきゃいいじゃないかとか、うちは他所の家とは違うと言う気概を持てとか、そんなことは理想論、空論ですよ。いまや子供向けテレビは、子供相手に娯楽を提供してるのではなくて、子供から、子供を持つ親からいかにしてお金を搾り取ろうかと、考えてる悪質な業者にしか見えないと、主張されてるのだよね。(業界に勤めてる方ゴメンナサイ)そんなテレビと玩具メーカーと、子供を持つ親との関係をセキララに描いた快作。もっと長編で読みたいぐらいです。
●シンデレラ白夜行
このタイトルは!そして、この「シンデレラ」は!!東野さん、巧いですね!
●笑わない男
オチは一番おもしろかった。

ひさしぶりのライトでブラックな東野作品、楽しめました♪



なんて素敵にジャパネスク 3/氷室冴子★★★★★
集英社コバルト文庫
「人妻編」です!ついに高彬と「結婚」した瑠璃姫。しかし、平穏な新婚生活になるとは思えず。
はたして、今回の騒動は…まず、義理の母親がなにかと余計な気を回し、瑠璃姫を疲弊させるのだ。そして陰陽道や占いにおおきく振り回されていた平安時代なので、「忌み月」なんてものがあり、新妻との逢瀬を憚り新郎は訪ねて来ることができなかったり、くせものの煌姫再登場、しかも彼女を瑠璃姫が引き取らなくてはならなくなったり、そうかと思うと吉野で出あった峯男の正体がわかったり、いろいろと波乱の新婚生活の幕開け。
この時代の「通い婚」って、結構いいと思いませんか?(←あんまり深くは考えてない発言だけど)
現代のケッコン生活とは、毎日顔を突き合わせては、嫌な部分も見てしまうからモンダイなのでは。考えるに「いつ来てくれるのかなぁ」と、思いながら暮らすのは恋愛感情が長続きして良い…かと、思うけど、一夫多妻ということに耐えなければならないのはちょっとね。それを思うと高彬は終生を瑠璃姫ひとりに捧げると言う誓いを立ててるのだから、こんな理想の相手はいないのだよね。 読めば読むほど高彬に惚れていってしまいます。でも、自分の子供よりも年下なんですけど…。(苦笑)
気になるのは煌姫の存在(嫌な女だよね、彼女。でも、もっとくらいついてきて物語を面白くして欲しいような気もします!)と、新キャラ師の宮ですよ!どう絡んでくるのかな〜。今後が楽しみ!!



ジャパネスク・アンコール!
続 ジャパネスク・アンコール!/氷室冴子
★★★★★
集英社文庫
●高彬のジャパネスク・ミステリー の巻き
●ジャパネスク・スクランブル の巻き
  「ジャパネスク・アンコール!」より
●守弥のジャパネスク・ダンディ の巻き
●小萩のジャパネスク日記 の巻き
●瑠璃姫にアンコール! の巻き
  「続 ジャパネスク・アンコール」より
「あたし」(瑠璃姫)から見た今までの物語と変わって、今回の2巻では周囲の登場人物からみた「ジャパネスク」色々!
今回は何といっても「守弥」がいいです♪これは高彬のお付なんですね。子供のころに寂しい境遇を高彬に慰められて、それから高彬に忠誠を誓うという、ほんとに高彬を大事に思ってるのが好ましい。好ましいのだけど、我らの瑠璃姫を嫌ってるのが玉に瑕。あの手この手で高彬と瑠璃姫の仲を裂こうとしてるのだが、この「スクランブルの巻き」で、守弥の思惑とずれていってしまうあたりがとっても面白かった!煌姫を利用しようとして…それまでの守弥は憎たらしいぐらい策謀家で、どうなってしまうんだろうとちょっと心配にもなったが、逆に追い込まれる立場になってしまったときはにやけてしまった。
そしてその続編とも言える「ジャパネスク・ダンディの巻き」では「きっと高彬は瑠璃姫をスキになる!」と言うのは想定どおりだったけど、ああ言う形だとは!しかも、やはり吉野君を思いつづけてる瑠璃姫に、ここでもじーんとしてしまった。
そして「瑠璃姫にアンコールの巻き」では、やっと都に帰ろうとしたらまたまた事件が!瑠璃姫の弟の融が行方不明になってるのだ。行き違いから、高彬は瑠璃姫の行方もわからなくなってしまったと憔悴してしまうが当の本人はいたって元気に能天気に都に帰る途中だった。で、思わず高彬は瑠璃姫にびんた!!
でも、あとでぎゅっと抱きしめて「融よりも瑠璃さんのことばかり心配してた」なんて、ムフフ〜〜♪と顔がにやけ…(苦笑)
融の行方不明というミステリーも絡んで、夏姫という新キャラも登場して、そしてそして、ついについに念願の〜♪初夜!!??きゃー。ムフフ。ふほほ。
仲良き事は美しきかな…。まだまだ続きがあるのだけどとりあえずここまでUP。
すべてmocoちゃんからお借りしています。どうもありがとう♪♪




なんて素敵にジャパネスク 2 /氷室冴子★★★★★
集英社文庫
第2巻、さてどうなるのやら、ついに高彬と瑠璃は契るのか?…と思いきや、またしても大きな邪魔が!!
帝となった鷹男がしきりに瑠璃姫に迫ってきて、にっちもさっちも行かなくなっててんてこ舞いする瑠璃姫。宮廷に勤める高彬は帝の意思には背けず、かと言って瑠璃姫への気持ちも捨てられないのだ。間に入って苦しみながらも高彬は高彬なりに打開策を練ってると言うのに、瑠璃姫は早合点してしまって勝手に腹を立てたりして「尼になる!」と…。
だいたい、この瑠璃姫の直情型行動力の大きさが面白い。これでやきもきさせられてハラハラしつつも内心は安心して成り行きを見守ってると言うのは、こっちがトシとってから読んでるからかな?
でも、自分の家が燃やされたり呪いがかけられたり?コメディ一色で笑い満載の本編の、面影を残しつつもシリアスでミステリチックな2巻なのだ。
そして、明らかになった吉野君の正体と、吉野君の親を思う気持ち、また親としても状況から親らしい事をしてやれないジレンマに苦しむ様子など、涙なくしては読めない…という先輩ファンのお言葉も納得。私も泣きました!ラストの瑠璃姫の吉野君を待つ姿など、ほんとに切なくなった。
好きな高彬がちょっとかすんでしまって残念だけど、でも、感動の第2巻ですね!
それと、氷室さんの作中歌がまた良いね。平安当時に生れても立派に「やんごとなき姫君」になれたのでは??^^



なんて素敵にジャパネスク /氷室冴子★★★★★
集英社文庫
時代は平安、今ならまだまだガキンチョの12〜4才の少女も、当時は裳着をすませたらば「結婚」する年齢だった。主人公の大納言藤原忠宗女瑠璃姫はもはや16歳だったから、周囲は焦ってなんとか結婚させようとするのだが、肝心の姫は今は亡き、幼い頃の初恋の君「吉野君」(←「よしのくん」と読んではいけません。「よしののきみ」です。)が忘れられない。しかし、そんな瑠璃姫の気持ちなんてお構いなく、今夜にも38才の中納言が姫の寝室にやってくる!既成事実を作り上げるために!瑠璃姫、ピンチ!?
おっもしろー!(笑)
自称氷室ファンと言いつつ、後年の作品しか読んでなかった私って、真性ファンから見たら「ヒンシュク」だったのではないかと思った(汗)。それほど「この作品を読まずして氷室ファン語るべからず」って感じの面白さなのだ!(って、全編はまだ読んでないので、ここでもエラソウな事は言えないはずなのだが)
平安時代という大昔を背景に、その当時の生活習慣や風習をきちんと表現しながらも、なおかつ現代人が読んでも共感できる物語をこんなにおもしろ楽しく描いてあるなんて、すごい事ですよ。
瑠璃姫みたいな破天荒な姫様がこの時代にいたとは、とうてい思えないものの、でも全然しらけてない!たしかに全編マンガみたいなんだけど、マンガよりも頭の中にリアルな映像が浮かんでくるような凄みがある。
なんと言っても、瑠璃姫が魅力的♪そして、この姫をめぐる恋の騒動がまったくツボでした。幼馴染の吉野君が忘れられないながらも、ずっときょうだいのように育ってきた高彬を「男」として見始めるあたりの気持ち、そして、高彬の瑠璃を好きな気持ち、契りたいのにその都度邪魔が入るじれったさといい、全編ニマニマと顔が緩みっぱなしだった。
高彬、いいですね〜♪好き!良い男指数95%!トシ下のしっかりした男にこんな風に扱われたらときめきますなぁ(笑)。もちろん鷹男も良いですよ。危ういところを間一髪で救ってくれるなんて、よだれが出るような乙女の妄想シーンではないか!



タイムスリップ森鴎外/鯨統一郎★★★
講談社ノベルズ
大正11年(1922年)何者かによって80年後の「現代」にタイムスリップさせられた森鴎外。そこで知り合った高校生4人と、知り合う。みんなで知恵を出し合って、森鴎外を大正時代へ返す方法を探るうち、当時の文豪たちに共通の出来事が浮かび上がった。なんと、大正から昭和初期の作家たちの多くが若くして死んでいるのだ。この現象はこの時期だけに限られる。それは何故なのか。
最初は面白く読んだんだけど、あまりにも鴎外が現代に順応するのが早すぎて、ラップ、ケータイ、パソを使いこなし、はてはホームページは作るは「一発太郎」なんていう、サイト管理歴5年経ってる私も知らない情報を使いこなし(ちょっと悔しい)あまりにも現代に溶け込みすぎだよ…と、ちょっと付いていけなかった。森鴎外という人は頭のいいヒトだとは解ってるので、なにもかも軽く吸収できるのかもしれないけど…。もう後ヒトヤマくらい欲しかったかなと思う。
それに私「乱歩」の大ファンなのです。「赤い部屋」知っています。「D坂の殺人」知っておりますとも!だからといって「けしからん!」とか、言う積もりは無いんです。却って「よっしゃー♪」って感じはするのだけど。でも、もっともっとすっきり納得できるようなオチにしてもらったら楽しめたかもしれない。ドラえもんで言うところの「タイムパトロール」、あれが出るとドラえもんでもしらけてしまうのですよ。出るのならもっと「おおもと」の時間で出ればいいのでないか?と思うのです。そしたら「事件」さえ起こらなくて、事件前に解決するんでしょ。ま、それだと全然「はなし」にならないんだけどね。
辛口で何様?って感じです。申し訳ないです。すみません。この本のファンの人はさらーっと流してね(苦笑)
発想や着眼はすっごく好きなんですけどね。



母恋旅烏/荻原 浩★★★★★
双葉文庫
元々は旅回りの大衆演劇の一座で役者をしていた花菱清太郎。十数年前に所属の一座を辞めて自分の一座を興したものの、いつの間にか辞めてしまい、今は三つ目となる自社「レンタル家族派遣会社・花菱エンターティナーカンパニー」を経営している。仕事が変わるたびに振り回される家族たちと、昼間でも夢を見ているような父・清太郎。花菱一家の行く手に待つ未来は一体…??
おぎりん、相変わらず最高です!!
今回は「浪花節」って感じでしょうか?それとも「演歌」?
語り手は「ぼく」寛二。この花菱一家の次男坊がとってもいい味。すっごく可愛くて愛しい。語り口がほのぼのとしてなごみます。そして、本当に自分の親だったら困るだろうが、父清太郎もまた読んでる分には楽しくて面白い。 家族だけではなく、おぎりん特有のキャラそれぞれの魅力も光る。
物語の魅力はなんと言っても後半に集中される。→結局、旅回りの一座に戻って演劇をするのだが、その場面の描写のすばらしさよ!(これも、寛二の語りが良いからだと思われるが)その劇の内容がものすごく面白そうで、じかに見てみたい!でも本当にその劇を見ているように楽しかったし、巧くいくのかと、ドキドキしたりハラハラしたりさせられた。そこに出てくる桂木さんが、また!いい男なんですよ!!荻原さんのステキなところはキャラの作り方ですね!いつもいつも「このヒト!」ってキーマンが出てくるんだけど、今回は桂木さんだと思う!
笑いあり、涙あり、そして胸が温かくなるだけではなくほんのりとほろ苦さも…。
ラストたくましく成長した寛二にも、タイトルとリンクしたほろ苦さにも胸が締め付けられました。 大好きです!!!!おススメ!!なおぞうさんに送っていただきました。ありがとう♪
(感想、読みにくかったらゴメンナサイ)



震災列島/石黒 耀★★★★
講談社
地質学者であった主人公・明石真人は、名古屋市内でボーリング(穴を掘るほう)の会社を経営している。東海地震の予兆におびえながらもその土地で暮らす彼らの近辺で、不審な事件が頻発するようになった。犬や猫が殺されたり、郵便受けにトリの屍骸が投げ込まれたり…。地域の会長である真人の父親明石善蔵は、最近この周辺に住み始めた暴力団風の「阿布里組」が怪しいと睨んで直談判に行くが、あっさり否定される。
そんなとき、明石の娘が行方不明になり…。
近い将来必ず来ると言われて久しい「東海地震」。それが実際に起きたとき、東海地方は、日本はどうなるのか…。地震の起きるメカニズムを分かりやすく解説しつつ、過去のデータから東海、東南海地震との連動があるかどうか「予言」したうえでのシミュレーション的な内容に加え、地震を利用して地域を乗っ取ろうとする政治家や阿布里組との対決、そこにきて、日本のTOPがまた、地震を利用してよからぬことをたくらんでいたり、おまけに静岡遠州灘にある原発が地震が原因で事故を起こしたり…と、エンタメ的な内容まで盛り込まれた濃い内容の一冊。
ちょっと濃すぎですか?って感じもしたが、(だいたい、主人公の娘が悲惨な状況になるんだけど、これがちょっとあまりに辛すぎて→「ヤクザたちに暴行輪姦された上に将来を悲観して飛び降り自殺」引いてしまいました)実際にこんな大きな地震がきたら混乱振りは想像を上回るだろうから、「盛りだくさん」でもちっともおかしくないんだけど、私の好みからいうともっとエンタメ性を低くして、ドキュメンタリー風に進むほうが好きかな、と。たとえば吉村昭氏の「関東大震災」みたいな感じ。
でも、地震と政変の関係(=地震活動が活発になると大きな政変が起きている)の考察もなるほどと、納得できて面白かったし、なによりも地震の描写がリアルで怖かった。ああ、ほんとうに来るんだよね。東海地震。怖いよう〜!!!
その腹積もりのためにも読んでよかった一冊。




銀行籠城/新堂冬樹★★★★
幻冬舎
あさがお銀行中野支店、7月15日の午後、一人の男が行内の従業員行員あわせて37人を人質にして、たてこもった。冷徹に一人また一人と、手持ちの拳銃で打ち抜いていく。男の要求は何なのか。10年前に籠城事件を解決してから「平成の名刑事」と称号を与えられた鷲尾が犯人に対峙する。
いつもの新堂テイストはなし。めちゃくちゃシリアス!もちろん、籠城の犯人の冷徹で残酷な行為は新堂さんならではの描写だけど、いつもどこかにある「笑い」のかけらもないのだ。
何故この犯人がこういう行動に出たのか…そして、この事件がどう言う形で終焉を迎えるのか、それが知りたくて一気読みである。
犯人のひととなりとともに、「平成の名刑事・鷲尾」の内面描写も興味が持てる。体面、体裁を気にする組織の上部にたいする憤りと、相対する鷲尾の人命第一の姿勢は好ましい。
ラストはすこし、あっけないような気がするけど「加害者」側の視点で捉える部分があるなど意欲的な ところが私には面白かった。

mocoさんからお借りしました。ありがとう♪



三億を護れ!/新堂冬樹★★★★
徳間書店
教材の訪問販売会社に勤める河内は全くうだつのあがらないセールスマン。今月もたったひとつの契約しか取れず、会社の厄介者扱いだ。家でも妻や娘、そして娘の彼氏にまで馬鹿にされている始末。
が、そんな河内がなんと、宝くじに当たった?金額は「三億」!
しかし、どこからともなく嗅ぎつけて、誰もがその三億を狙う。護れ!!三億!!!
「もう読みたくない」と、思うものの、ついまた読んでしまう新堂作品。でも、今まで読んだ中で一番面白かった。新堂作品のテイストは健在なんだけど、ちょっとソフトな感じだったかな。
宝くじが当たったら、いろんな意味で人生も人生観も、人間関係も変わってしまうと思う。想像するだけで「ああなって、こうなって」と、ノイローゼになりそう。この主人公もまさにそんな目にあっていくわけですが、それがなかなかコミカルにスピーディーに描かれてて笑える。
でも、主人公のおっさんがあまりにもバカでどうしても好きになれない。こういう下卑た情けないおっさんを描かせたら、新堂さんはうまいと言うか、ほんとに、嫌いなタイプを書くのがお上手!!
物語の中盤まで来たら三億が「敵」の手に渡ってもいいや!とすら、思えた。それでも、その先スピードダウンせず一気に読ませるあたりがさすがです。
ラストのオチも含めて最初から最後まで面白く読めた。いつもよりも若干コメディが強かったけど、いつも「ギャク」との紙一重の作品が多いので、違和感は全然なし。オススメできますね。