2006年の読書記録*10月



パパとムスメの7日間/五十嵐貴久★★★
朝日新聞社
イマドキの女子高生、小梅と、イマドキのサラリーマンの父親の身体が入れ替わるコメディです。 映画の「フォーチューン・クッキー」なんてのも、これは母親とだけどムスメが入れ替わるのです。 特に今回、目新しさは感じなかったけど、それなりに面白く読めた。 とくに年の差を感じるのはケータイの使い方など。映画や本も。 おっさんなのにすごいスピードでケータイを打つ、そりゃみんなにビックリされるよね。同じことを女子高生がやっても素通りなんだけど。 憧れのケンタ先輩とのデートで、思わず「小説」の話で意気投合して盛り上がるのは笑った。あそこが一番おもしろかったな。やっぱ本読みとして気持ちがわかるのですね。 視点を変えて、立場を変えれば今まで気付かなかったことに気付く、というのが入れ替わりモノの普遍的テーマと言うか。 予想通りの展開とオチなんですが、それでも楽しめた作品です。



新潮45 その時、殺しの手が動く/「新潮45」編集部 ★★★
新潮社
実際に起きた事件のルポ。これは「新潮45」シリーズ第3弾です。 テレビや新聞をにぎわしたニュースを、検証して背景を探るというもの。 相変わらず凄惨でおぞましい事件の数々が浮き彫りにされ、人間の愚かしさを伝えています。 が、今日は、愚かしさの中に歴然と存在する人としての美点、というかホッとできるエピソードをご紹介したいです。

背景となる事件は、2000年の8月に大分県で起きた殺人事件。 民家に15歳の少年が押し入り、寝静まった一家6人を次々とサバイバルナイフで襲った。結果、死者3名、残る3名も重症を負う。 少年はその家の主(65歳)と釣り仲間だった。 少年の周囲で、ポルノ漫画を撒き散らしたり下着泥棒が頻発していて、村の住民たちから疑われていた。 被害者の家では、少年と同じ年頃の少女がいて、彼女が覗きの対象であったらしく風呂場を覗かれたり下着を盗まれたりした。 そのことを、一家の主が注意したところ逆恨みをして犯行に及んだようなのだ。 少年が育て来た背景なども書かれていてそれも興味深いけれど、ここでは割愛。 さて、亡くなったご家族はその少女から見て、おばあさん、おかあさん、弟の3人。 覗かれていた少女は一命を取り留めたけど、ナイフの傷が神経に達していて下半身が不自由になってしまう。そして、亡くなった弟のほかにももう一人弟がいて、この弟もナイフで胸を刺されたが幸い心臓部を外れ、長時間の手術の後に命を取り留める。でも、重いトラウマを抱えることに。 もう一人命を取り留めた、おじいさんはナイフの先が脳に達したために今も寝たきりの状態らしい。

実はこの少女の両親は離婚していて、母親が実家に帰って祖父母と暮らしていたらしい。 で、こう言う事件にあって別れたお父さんが現場に急行。その現場を見て激しく後悔されたという。 自分の娘と息子を引き取りたいと思うのだけど、今現在の家族への遠慮からなかなか言い出せずにおられたようだ。 でも、そこで、今の奥さんが「お父さんが引き取らんでどうするん」と切り出された。そして、お父さんから見れば連れ子にあたる今の子どもさんたちの励ましもあり、娘さんと息子さんを引き取られたそうだ。 被害者の少女は、車椅子で高校大学に進学、それを仕事をやめた今の奥さんが送り迎えしておられるという。 まだ車椅子の生活は続いてるだろうし、被害に遭われたことは本当に言葉も出ないぐらい気の毒なことだけど、お父さんやお父さんの新しい奥さん、そのお子さんたち、そう言うすばらしい人がこの世には確かにいらっしゃるのだと思うと、酷い事件の数々の中に一筋の光が見えるような気がして、ほんの少しだけでも救われるような気がするのです。





なぜ家族は殺し合ったのか/佐木隆三★★★★
青春出版社
ものすごく怖い本。 こんなのを読んだらユーレイも物の怪も吸血鬼も怖くないです。 人間の恐ろしさ、残酷さおぞましさ、そしておろかさと弱さ。余すところなく描かれていた。ほんとに怖かった…。

この事件は「新潟少女監禁事件」が発覚した直後に発覚した「小倉少女監禁事件」です。ニュースでも大々的に報道されたのでまだ記憶に新しいですよね。少女がおじいさんのところに助けを求めて逃げ出して、少女の父親は犯人との同居の末に殺されたと言った事件です。あの時はこの事件がここまで凄惨な事件だったとは知らなかった。本書でも報道の順番を追って、書かれているので最初のうちは何が何やらわからないという状態です。が、徐々に事件の全貌が明らかになるに連れ、読むだけでも胸苦しさを覚えるほどにおぞましく、陰惨で凄惨な事件だと言うことが分かってくる。それはもう、こんなおそろしい犯行が今までに会ったのかと思うほど。例えば大昔だけど「津山30人殺し」などと言う戦後最大の虐殺事件もある。でも、残酷さで言うと断然今回の事件のほうが残酷だと思うのだ。 この事件が残酷なのは、殺されたのは逃げ出した少女の父親だけではなく、犯人の家族だったと言うから驚くではないか。松永太の内縁の妻の緒方淳子。その緒方の実家の、父と母、妹夫婦、その子ども二人…自分の肉親たちを6人、「一家殲滅」に追いやっていると言うこと。また、6人の中でも家族でありながら松永に操られるままに、暴力をふるったり、その果てに直接手をかけて殺したりもしたらしいのだ。

そして殺した上に、死体をバラバラにして処理していること。 特に、発見された少女はその殺人や死体処理を強要させられており、その供述が本文中に裁判のときの証言と言う形で明らかにされてるのだけど、非常におそろしいです。人間をバラバラにする…、小説ではいくらでも読んできたし、慣れてるかもしれない。だけど、この本での「それ」は、今まで読んできた小説とは格段に違うおそろしさがあった。手が震えるようだった。 脳は頭の天辺を切るのではなく、下あごから…などと言う供述があり、生々しい恐怖に駆られます。 それにしたって、何故そんなことになったのか、それは本書をぜひとも読んでいただきたいのだけど、人間の愚かしさ…たきつけられれば家族でありながらも、疑っては暴力をふるったり果ては殺したり…そこまで落ちてしまう弱い生き物なのだと言うことが分かる。またそれをさせる松永の残忍さには声も出ないぐらいだ。

著者は、この犯人像がオウムの麻原彰晃と似ていることに注目。麻原が部下や信者をマインドコントロールで支配下においたように、松永もまた「虐待」「電気ショック」という暴力による恐怖感を植え付けることで、被害者たちをマインドコントロールしたと言うこと。麻原は殺人は「自分はやってないし、指図もしていない。部下が勝手にやった」と言ったが、この事件の犯人松永太も「家族同士で勝手に殺しあった」と言ったことも似ている点だ。 一番怖いのは、松永太が「実行犯ではない」…ということか。 いかに凄惨な事件でもそれを直視して反面教師として学習するしかないという著者の思いが、事件の凄まじさの前では霞んでしまいそうである。 わたしは事件のルポは好きで割と読むが、ここまで怖いと思ったのは初めてだったように思う。



武士の家計簿/磯田道史★★★★
新潮新書
とある古書店にある温州みかんのダンボール箱。その中に古い和紙が詰め込まれていた。それはこの著者が長年切に手に入れたいと願ってきた「武士の家計簿」である。天保13年(1842年)7月から明治12年(1879年)5月まで37年間の、実に詳細な金銭出納の記録だった。金沢藩(加賀藩)の算盤係だった猪山家の日常を、残された家計簿や書簡メモ書き等から、瑞々しく蘇らせる。今までは知らなかった武士の暮らし振りが事細かにわかり、感慨深い1冊です。 (詳しい内容は、書店サイトなんかの商品説明を見て下さいね)

小説じゃない。ただ、著者が金銭の出し入れに従って、一家の生活状況を解説していっただけ(だけ、と言うのは語弊ですね)だけど、すっごくリアルにその場面が目に浮かぶんですよ。 武士は食わねど高楊枝、の喩えの通り武士って言うのは貧乏だったんですね。この猪山家は「筆算」能力が人よりも長けていたので(それなりの努力もしただろう。結構スパルタだったみたいだし)下級武士の中ではエリート的存在だったと思われるが、それでも、貧乏暮らし。たとえば、この家から二人が役所に出仕していた時期(一つの家から同時期に二人の人間が出仕することは許されていなかったらしいが、これも算盤係ならではの異例のことだったらしい)にも、二人合わせて年収が(今の金銭感覚に直して)1230万円。うん、結構な金額。でも、出費がメチャクチャすごくて、借金を余儀なくされて借金が年収の2倍にもなったらしい。主にお付き合いやしきたりにお金がかかったらしい。出世すればするほどその出費がかさみ、貧乏が募っていく…不思議な仕組みだったらしい。 前半は、猪山家の経済状況を覗きながら当時の武士階級の暮らし振りを再現。とっても親を大事にしていたとか、親を立ててたとか、そう言うことが数字で分かります。案外にも女も大事にされてたみたい。お小遣い(給料?)もちゃんと別会計でもらってて、経済的に自立していたんですよ。うちなんて、主婦のわたしはお小遣いも当たらないしもらっても食費に消えちゃう。(ま、ちまちまと古本を買ったりするお金は、家計から使ってますが)夫のパチ代には膨大にお金がかかってるし、ちょっと武士の家計簿、見習うべきです。キッチリすると言うことが大事なんだなぁ…と、改めて思い知らされる。 そして後半は、猪山直之成之親子に焦点をあて、幕末から明治にかけて武士たちがどのように生きたか、武士そのものの行く末はどうなったのかを描いてあります。 算術によって出世した成之はやがて、大村益次郎に認められ、益次郎の死後も海軍にて算術面で活躍するが、結局不幸な晩年を送ったらしい。 小説ではないのに、小説以上にドラマティックな一冊だった。



無痛/久坂部洋★★★
幻冬舎
為頼英介47歳、町医者。かれは人の持つ病気や症状を外見から、当てることができる(見える)特異な能力を持つ。 あるとき知り合った、精神障害児童の私設で働く臨床心理士の高島奈美子から、施設内の14歳の少女サトミのことで相談を受ける。 それはサトミが、一家4人が惨殺された事件に自分が関わっていると言うものだった。 その奈美子は、元夫から執拗なストーカー行為を受けていた。 一家惨殺事件を追う早瀬は、刑法39条への疑問と必要性の間で揺れていた。 為頼のように「見るちから」がある白神メディカルセンターの白神は、為頼を病院に迎え入れようとしていた。 その白神は、先天性無痛症のイバラを雇い、世話をしていた。 それぞれの物語が繋がる時、事件の結末は…。

面白かったけど、これ、最後まで読めない人って結構いると思う。 あまりにもグロくてえぐいんだもん。 冒頭に、一家4人の殺害現場が事細かに状況説明されてるのだけど、淡々とした描写がグロくて怖い。 今まで読んだ残酷シーンの中でもトップクラスであると思う。 その後も、すっごくえぐい描写があり、グロ好きのわたしもさすがにゲンナリしてしまった。 物語りも、詰め込みすぎの感があったかな。一体何の物語を読んでいるのか分からなくなってしまった。 刑法39条の必要性について、早瀬という刑事がずっと悩んでるのだけど、それが一番この物語の中では読み応えがあった。もうちょっと膨らませてもらっても良かったと思う。 犯罪を犯す人間にたいしての考え方などは、こうやって説かれると納得してしまいそうだけど、差別に繋がる怖い発想では?とも思えた。 どうも極端なんですよね。それが魅力かも知れないけど。



赤い指/東野圭吾★★★★
講談社
妻に頭が上がらない、言いたいことも言えないだけじゃない、自分の親を大事にすることすら禁じられてしまう主人公。それでも、まだ妻には文句も言わない。その家の息子がまたバカ息子で(この親にしてこの子あり…みたいな?)とんでもないことをしでかした!!さあ!親としてはどうする??

冒頭からともかく、この男のダメっぷりにイライラしながら読んだ。イライラしつつも次のページが気になって仕方がないのは東野さんの上手さか。読めば読むほどに、この男のダメダメ度が上がっていく。 妻も相当なもんで、ともかく自己中!小説と分かっていても、その身勝手な発想にはあきれて絶句してしまった。いや、叫びました。何度も。心の中で。「なんですとーーーー???!!!」と。 東野さんが描くミステリーとしては、なんだかな〜〜〜って感じだった。ラストも読めましたね、さすがのわたしも。 しかし、いつもながらほんとに好感の持てる登場人物が少ない。それなのに物語は面白い。これは東野さんの魅力としかいえないですね。 加賀刑事の従兄弟を通して、加賀親子の顛末を見せる手法はグッと来た。最後に「本当のこと」が分かる時、一番よかったなぁ。本編の内容とは別モノなのだけど、練りこみ方が上手いと思いました。 短編を引き伸ばしたみたいだけど、だからかな…軽く一気読み。面白かった!



灰色のピーターパン/石田衣良★★★★
文藝春秋
収録作品は ●灰色のピーターパン
●野獣とリユニオン
●駅前無認可ガーデン
●池袋フェニックス計画
各感想は↓にて。

●灰色のピーターパン

ケータイを使った違法ビジネスで儲ける小学5年生のミノル。あるときタチの悪い高等部の生徒に自分の仕事をネタに恐喝されるはめに…。 ミノルが頭が良くて唸ってしまう。我が子もこんなにデキたらわたしも楽な暮らしができるなぁと羨ま…これこれ!!なんだかんだと言って、マコトを慕うミノルが可愛かった。

●野獣とリユニオン

「リユニオン」ってナンだろうと思ったら「再結成」って言う意味だとのこと。リ、ユニオンね。 たった3000円のために膝を壊され、二度と夢の叶わない身体になった兄を持つチヒロ。暴漢は未成年だったので7ヶ月少年院に入院していただけで大手を振って歩いていると言う。その時の犯人に、兄と同じ目にあわせてほしいとマコトは頼まれるのだが…。 「目を見て話したい」という兄の心に打たれた。 きれいにまとまりすぎかも知れないけど、こう言うのは好き。 なるほど、リユニオンね。

●駅前無認可ガーデン

無認可保育園で働くテツオはちょっと知恵遅れの、だけど子どもが大好きな青年だったが、頻発する幼児への性的犯罪を懸念した保護者から、信用されない。マコトは、テツオが「性犯罪者の素質を持っていない」ことを立証してくれと頼まれる。

●池袋フェニックス計画

池袋の治安回復のために計画された「池袋フェニックス計画」。 暴力団や不法滞在の海外人を一斉摘発して町全体を「除菌」するという。 そんな時、姉がホストクラブにはまった挙句風俗で働いているのを救いたい、と言う音大生のイクミが現れた。 結構ハードボイルドで、迫力のある物語。長いのでちょっと途中ダレたかな?というよりも、もうちょっと長編にしてじっくり描いたほうが読みやすかったかも。駆け足の印象か??



闇の底/薬丸 岳★★★★
講談社
+++あらすじ+++

埼玉県警の長瀬、幼い少女が性犯罪の対象となり殺された事件を扱うことになったが、彼自身もまた犯罪被害者の一人であった。 時を同じくして、公園のゴミ箱から凄惨な殺人遺体が発見される。 ふたつの事件は奇妙なつながりを見せる。 殺したもの『サムソン』、そして刑事たち、視点を入れ替えながらやがて事件は劇場型犯罪へと発展してゆく。 犯人『サムソン』とは誰なのか?誰が犯人に辿り着けるのか?

+++感想+++

サクサク読めるけど、「天使のナイフ」の時のように後半に期待したスピード感もなく、特に引きつけられると感じることもなく、平坦な盛り上がりのまま終ってしまった感じ。 ラストの終り方も、なーんかキッパリしてなくて。読後感が悪いと言うか、納得できないと言うか。でも、読者がそう感じるのを著者は狙ったと思う。読者にこの手の犯罪への問題意識を高めるように提言していると感じた。 でも、好みではなかったです。

主人公の刑事、長瀬は過去に犯罪に遭っている。それが本書の一つのキーになっていて、長瀬の過去や心理状態には非常に興味が湧いたし、リアルな設定でひきつけられはしたけど、読者に肩入れさせるほどの魅力や痛みが伝わって来ないように感じた。ひょっとして先日読んだ「心にナイフをしのばせて」と知らないうちに比較していて、迫力負けしていると感じたかも。

ただ、犯人がなぜ犯行を思い至ったかと言うところが…すごく生々しくて怖かった。納得。この本で一番よかったのは「犯人の動機」です。これはちょっと唸らされてしまった。 それと、法治国家における私刑の是非。もちろん私刑はゆるしてはいけないこと。登場する刑事達の苦悩はそれを再認識するだけの説得力があった。



The Manzai 3/あさのあつこ★★★
ジャイブ
前巻は学校の文化祭で漫才を披露するまでのすったもんだが面白く、その後夏祭りの特設ステージで漫才をやるという話に発展していき、ふたりがその勇姿を見せてくれるのかと思ったのだけど、いったん足踏み状態。個人的な問題が持ち上がってくる。例の仲間たちで難局を乗り越えられるのか…、という感じでしょうか。相変わらず、登場人物たちの会話が面白い。それだけでも漫才のようです。歩やメグの内面にもスポットをあてて、どんどん彼らが愛しい存在になってゆきます。 でも、少々ストーリーがとまって、すごくスピードダウンしているような気がします。夏祭りは?漫才は?と思うけどそっちのほうは全然進展がない。それが3巻のストーリーなのかも知れないけど。「バッテリー」の後半の時のように、会話ばかりで物語そのものが動かないと言うか。 そこだけがちょっと残念でした。

翔ママちゃんにお借りしました。ありがとうございました。



生首に聞いてみろ/法月綸太郎★★★★
角川書店
雑誌のライターをしている主人公の法月綸太郎は、昔馴染みのカメラマン田代周平から写真展の誘いを受ける。その写真展で、田代のファンだと言う川島江知佳と知り合うが、彼女は綸太郎の知り合いの翻訳家、川島敦志の姪だった。 江知佳は高名な彫刻家、川島伊作の娘であり、伊作の石膏像のモデルになっている。そんな話の最中に伊作が倒れたと知らせが入る。伊作が倒れた現場にあった江知佳をモデルにした石膏像は、首がなくなっていたのだ。誰が何のために、首を切り取ったのか? そして事件は起きた。江知佳が行方不明になったのだ。江知佳の失踪と、石膏像の首がなくなっていることとの関連は???

+++++++++++++++++

登場人物の相関が結構ややこしいかも。登場人物は少ないのだけど、中身の濃い相関を展開していて、最初のうちはメモをとりながら読みました(笑)。 事件が起きて、盛り上がるまでがちょっと長い。はやく事件が起きないかな〜と、不謹慎なことを考えてしまった(笑)。

事件そのものは、残酷シーンに慣れきってる読者にはたいした衝撃はないけど、同時期に読んだ他の作品との類似点にちょっとビックリ。(読んだのは「心にナイフをしのばせて 感想こちら」) なかなか進展しない捜査にイライラするが、こつこつ積み重ねるタイプの主人公の推理に、読者も徐々に巻き込まれるようにして読ませられる。だんだんと真相に近づく様子は読み応えがありワクワクした。 犯人がわかってみれば、今までまんべんなく張り巡らされた伏線の数々に思い至り、アレはそう言うことか、と言う発見の連続で、気持ちよく騙された感じの清々しさを覚える。 特に犯人は(またしても)全然分からなかったので、ビックリさせられた。犯人と言うか犯人が行った「工作」に驚かされた。 ラスト、皮肉な巡り合わせに愕然とする川島の慟哭が辛い。

でも、どうしても言いたくなる。 「そんな迂遠な手を使わず、さっさと自首と言う形で真相を告白すればよかったのに」と。ゴメンなさい!!(笑) でも、面白かったです!!



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