2010年の読書記録*page1



カッコウの卵は誰のもの /東野圭吾 ★★★
光文社
内容(「BOOK」データベースより) 親子の愛情に、揺さぶりがかけられる。覚悟を決めた父親は、試練にどう立ち向かうのか。父と娘、親子二代続けてのトップスキーヤー。娘の所属チームの研究者は、二人の遺伝子パターンを調べさせてほしいと考える。しかし、了承するわけにはいかない。父には、どうしても知られたくない秘密があった。娘が生まれた19年前からの忌まわしい秘密が。

うーん・・・・・
なんだろう、全然印象に残らない話だった。
自分の調子が悪かったかもしれないけど・・。
感想らしい感想が浮かんでこない。
モウシワケナイ。。。



救命拒否/鏑木蓮 ★★★
講談社
内容(「BOOK」データベースより) 講演中の救命医が爆破死傷事件に巻き込まれた。現場に駆けつけた救急救命士に向かい、彼が言う。「私にブラック・タッグをつけろ」その意味は死。大阪府警が犯人を追う。しかし二転三転する本ボシ。若手刑事は、事件の裏側に隠された真相に辿り着けるのか。乱歩賞作家が書き下ろしで問う、喪わされた者たちの悲しみ。医療トリアージ=命の選別をテーマに据えた骨太エンターテインメント。

そこそこ面白かった。トリアージタッグのことは、うっすらとしか知らなかったけど、そういう緊急の現場のことが少しは身近に感じられて、ちょっと分かった気がします。 全体に会話が多いし、主となる二人の刑事たちの描かれ方がいまいちに感じられたかな。もっと誰かに感情移入しながら読ませてもらえれば面白いと思うけど。 無理からミステリーにしているのでは?と思える展開で、その点も少し残念でした。 自分だったらどうだろう・・・と思うと、色々と考えさせられる作品ではありました。



氷上の美しき戦士たち/田村明子 ★★★
新書館
「氷上の光と影」の田村さんの新刊。ってことで楽しみにしていたんだけど、前作よりも個人的なエピソードが多くて、あまりノンフィクションとしての面白みはなかったように感じます。 ただ、内輪話的な面白さはあるけど・・・ちょっと自慢に聞こえた部分も多かったかな。 こちらよりも前作「氷上の光と影」を断然おススメします。 でも、こっちは写真が載ってるし、選手の個々のエピソードも面白い。長年取材してきた著者ならではのエピソードもあって、やっぱりフィギュアのファンなら読んで面白いんじゃないかな?と思います。 他の本をあんまり読んでないからでしょうか?



内定取消! 終わりがない就職活動日記 /間宮理沙★★★
日経BP社
内定をもらった企業から、ある日突然、とんでもない嫌がらせの数々。 企業からは内定取消を出来ない事情があるのか、大学生の著者は「お前から辞めろ」と言う暗黙の圧力を感じ、心身ともにひどいダメージを受けました。その記録を綴った本。 こんなひどいことが世の中あるのか?と思ってしまう。 人事のエライさんが、この著者に無理難題をおしつけ(受かるわけのない試験に合格せよ!とか・・)人格を否定し、能力をコテンパンにけなし、ともかくひどい態度をとる。 どこかで聞いたことがあるような気がする・・・と思ったら、カルト宗教の勧誘や、マルチ商法の販売方法に似ていますね。ともかく何時間も拘束し、相手の判断を鈍らせたり、打ちのめしたり・・・。 彼女は高校も偏差値60ほどの学校を卒業しているとのことなので、きっと大学も一流大学だろうし、この企業も一流の企業なんでしょう。それなのにこの実態は・・。 このエライさんにも家族があるんだろうに。 家族はこのことを知ったらどう思うんだろう。 なんて、考えてしまいました。 彼女を真剣に思う周囲や、大学の事務の人たちに、ほっとさせられます。 ブラック企業を見分ける方法も、著者ならではの考察が書かれていて、参考になります。



拷問するなら、されるなら/高平鳴海 ★★★
メディアファクトリー
すみません〜。残酷な本が大好きです。 本人は拷問はするのもされるのも、決して好みではないことを明記しておきつつ、本書のご紹介。 好きといっても、それほど数多くは、拷問関係の本を読んでないので、この著者の名前も知らなかったんですが、この人は、拷問を考察すること30年?と言う大ベテランだそうです。 本書は、だけど、拷問の入門編という感じでしょうか。 本としては、読みやすくまぁまぁな感じ。ひたすら、こんな拷問があったよと、70種類の拷問をひたすら紹介しています。深みというのもないような気がしますけど・・。 まぁ読めば改めて「怖〜〜〜〜!!!!」っと思えるので、私の場合そのスリルを求めてるって感じかな?←言い訳がましいかもしれませんが。。。 巻末に、著者とイラストレーターのあまね伽名さんとの対談があり、やっぱりイラストレーターの方は、拷問の原点といえば「ベルばら」ということでした。同じく・・(笑)・・・。(鉄の処女って、ほんとうに『そのように』使われたという確証はないそうですよ) で、自分だったらどの拷問が怖いかとか、おふたりでディスカッションをされてるんですけど・・・私とは意見がずいぶん違ってました。 だいたい、「拷問されるとしたらどの方法がいいですか」って、そんな質問にどうやって答えるんだろうか・・・この人たちは答えてましたけど。水責めかなぁ・・・とか(^_^;)。 私が一番怖いのは、やっぱり「木馬」系ですね。 「木馬」の発展が「ユダのゆりかご」っていうんですけど、苦痛は「木馬」よりも苦痛が大きいって書いてあるけど、どっちも嫌ですけど、木馬のほうが嫌な気がします。。。。 ってなことばかり考えて読み終えました。 あぁ怖かった・・・。



高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-/森雅裕 ★★★
成甲書房
ご存知でしょうが乱歩小作家の森雅裕さんが業界から離れてしまって、ついにはコンビニで働いていたときのエピソードを綴ったものです。 私は乱歩賞の「モーツァルトは子守歌を歌わない」は読んでますが(内容はほとんど覚えてないけど・・(^^ゞ)他の本を読んでないから、ファンでもなんでもないんですけど・・。 コンビニで働く人のドキュメンタリーって言うのが、一概に面白いのか、森さんが書くから面白いのか分からないけど、面白かった。 と言っても、中盤、延々とコンビニの仕事を説明している部分は、ちょっと退屈だなーと感じました。あまりに事細かに説明されても「ふーん、そうなんですか・・・」としか思えなくて(^_^;) いやいや、すっごく大変なお仕事なんだな!っていうのは分かりましたけどね! でも、後の大半はものすごく面白く読みました。特に接客に関する部分は面白かったなぁ。 クレイマー?と思うようなお客さんが多いのがびっくりしますよ。 お金を払うときに、投げつけるって何? 「お客様は神様です」って、自分のことを神とでも思ってるのか?っていう人が結構いてびっくり。 これを読みながら、自分は決してこう言う客にはなるまい・・・・ と思ったので、それからはレジで(コンビニに限らず)ことさらに気を遣い、愛想良くしていると言う・・(笑)。 でも、やっぱり、「なんだこのレジスターは!!」って思う人もいるよね。 まぁお互い様なんでしょうが、やっぱり「むっかー!!!」ッとするときあるよね。 森さんの場合、そう言う客とたまには「やりあう」こともあったようで、心から応援しながら読んでました!(笑) コンビニの話も面白かったけど、なぜ森さんが業界から離れてしまったのか、もっと詳しく知りたいと思ってしまったのでした(^_^;)



アフリカにょろり旅/青山潤★★★
講談社
ウナギについては、以前読んだ「ウナギ―地球環境を語る魚 (岩波新書)」のときに、ちょっと書きました。 まだ誰も、その卵を見たことがないと言う神秘の魚、ウナギ。 常々、研究者たちの根気と探究心にはひれ伏したい気持ちでいっぱいですが、この本を読んでますますその気持ちは強まりました。 現在世界には19種類のウナギが確認されているらしいです。 この本が書かれたころは、18種類とされていて、(19種類目を見つけたのも、著者のグループらしいです。この本の続編が連載中なんだけど、そこに書かれてました)その18種目のウナギを探すための、アフリカに渡った著者たち。 本書はその記録をまとめたものです。 ウナギの研究に関する本と言うよりも、ともかく、未開発のアフリカの地での生活そのものが大変! そのあたりのことが面白く書かれていて、どっちかっていうと、私の好きな高野秀行さんの「UMA探し」となんら変わりない感じがします。 水がない、シャワーが浴びられない、ペットボトル半分の水で、体を洗う・・・ 食べ物がない、お腹がすいても食べられない・・・ ゴキブリが10センチもある・・。うー。 いかに日本での生活が快適で、文化的なのか、しみじみと分かります。 そう言うことを訴えたい本ではないんだろうけど、それを痛感してしまいます(^_^;)。 爆笑もあったけど、ほんとうに大変だなぁと言う思いが残りました。 でも、こんな冒険をした人の話、一度生で聞いてみたいものです。



I'm sorry mama/桐野夏生 ★★★★
集英社
とある養護施設で育った男と、当時その施設で保育士として働いていた美佐江は、夫婦として暮らしていた。 親子ほども年の違う、その夫婦は、養護施設の卒業生であるアイ子に出会う。 アイ子の正体を知らずに、近づいた夫婦を待ち受けていた悲劇は・・・。 桐野さんらしい、負のパワーを持った女が登場して、読ませます。 でも、ひょっとして、これは第一章だけの短編として書かれたのじゃないかな? 第一章だけ、視点が美佐江で、ちょっと違和感がありました。 でも、その後は面白かった。



ナニカアル/桐野夏生★★★★
実在の作家を描くにはあまりにもスキャンダラスな内容で、すでにこの世の人ではないとわかっても、そこまで書いても良いのか?と心配になるほど。しかし驚くほど迫真に満ちていた。戦時下の文壇の様子なども面白く、戦争協力をしたとかしないとか後から批判するのは容易だけど、そのときその立場でないと決して分からないものだろうと実感した。蛮勇は周囲を不幸にすると言う言葉も印象的だった。ずっしりと濃密な小説で読むのに時間がかかったが、ひさしぶりに桐野作品で堪能させてもらった! 読了日:03月31日



ヘヴン/川上未映子★★★
すごくイヤな話だなぁ・・・と思ったけど、あっという間に読んでしまった。イヤな物語を、妙な感動モノとかにすり替えずに、イヤな感じに描いているのが良いと思う。その中でこのオチは中々良いのでは?自分が二ノ宮やその取り巻きだったらきっとコジマを忘れられないはず。イジメって多分、いじめられたほうは忘れなくてもいじめた方はいじめた事実を忘れてしまうと思うけど、コジマみたいなインパクトだと、トラウマを与えられるのでは?イジメたやつら、周囲で楽しんで見ていたやつらはずっと苦しめばいいのに・・・と思ってしまった。だけど、コジマはどうなったんだろう。。。。。 読了日:03月18日



ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。/辻村深月★★★★
角田さんの「八日目の蝉」や「対岸の彼女」みたいな味わいだったかな。女の友情の底に潜む感情・・みたいなのが上手く描かれていた。こう言う具合に心理描写が上手い作品だと、つい感情移入するし説得される。母と娘の作り上げてきた時間は、とても一言では表せず、他人から見たらどうと言うことはないような小さな出来事にも、本人たちが深くわだかまりを感じたりして、そしてそれらが積み重なっていく。良い思い出も悪い思い出もある。時々その思い出を天秤ばかりにかけるように釣り合いを取りながらこみ上げてくる感情をやり過ごしたりして。そんなことを考えて読んでました。最後は泣けた。 読了日:03月16日



罪火/大門 剛明★★★
「雪怨」も読んだけど、どうも文体が合わないみたい。主人公に全然共感できないんですよね。重いテーマなのにやけにライトに書かれてる感じのする部分もあって(恋人同士の会話とか)受ける印象がちぐはぐに感じたりしました。



がん患者、お金との闘い/札幌テレビ放送取材班★★★★
ガンにかかるとこんなにお金がかかるとは・・・知っているようでいて全然知らないことばかりで身につまされることばかりでした。自分には関係ない、自分はこう言う目に合わない・・・と、何の根拠もない過信は抱いてはいけないと痛感させられました。 今ガンは、手術の時代じゃなくて、通院で治療する時代らしい。そうなると、いくらガン保険に入っていても、保険が適応されない場合が多いとのこと。せっかく保険に入ってるのに、落胆するしかないのでは。保険の見直しも必要だと思うし、がん患者に、「障害者年金」が適応される場合があるらしく、患者にとって光明のひとつになっている。しかしそのことを、役所の職員も知らずに事務処理ができなかったり、遅れたりすることもあるそうで、患者も色々と自分でリサーチ勉強が必要なのかな。なんだか理不尽だ・・・ということを、余命を振り絞るようにして、患者のために運動している金子さんたちの姿にただ頭が下がったのでした。 読了日:03月08日



わたしのなかのあなた/ジョディ・ピコー★★★★
映画を見たので読みたくなりました。映画には映画の感動があったが、原作にも独自の感動があった。とくに登場人物たちの気持ちが細やかに描かれていてリアリティがあって胸に迫った。 映画を見たときは、提起されている「問題」にたいして答えを求めてしまい、答えがない事に多少がっかりした感じがしましたが、原作では「答えがない」ことが答えなんだ、と言う納得がありました。 映画も泣けたけど、原作も泣けた泣けた。

ただ、ラストはいただけませんでした。なんであんなラストにしたの??安直に「奇をてらった」としか感じられなくて、とても残念。作者はあのラストにどんな意味をこめたのだろうか。



僕は人生を巻き戻す/テリー・マフィー★★★★
年末とか年始とか忘れたけど、その特番のテレビで見て読みたくなった。テレビでは映像もあったので、思い出しながら読みました。すごく過酷な症状にも驚いたけど、彼を支えた人たちとのつながりがまた、感動的だった。



消えた警官 ドキュメント菅生事件/坂上遼 ★★★
「下山事件」や「松川事件」と並び語られる冤罪事件(?)。 戦争が終って一直線に民主化に向かったわけではなく、ファシズムにも通じる時代への逆戻りの危機があったということに、いまさら驚いています。読物としては、ちょっと読みづらかったかな。



死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人/池谷孝司★★★★
「我思う ゆえに我あり」と同じく、二つの残酷な殺人事件を起こした山路悠紀夫の事件が描かれています。「我思うゆえに我あり」は、「山路悠紀夫の生涯」が描かれ、こちらはその「犯罪」と「障害」が描かれているように感じました。向こうはかなり情に訴えかけてくるのに対してこちらは淡々と、どちらかと言うとアスペルガーと言う障害に拘って追求しているように見られた。



私のこと、好きだった?/林真理子★★★
久しぶりの林真理子。アラフォーの女子アナの生活。 あいかわらず心理描写が上手くサクサクと読ませられました。女子アナの未知の世界を面白く追体験した感じです。「コスメティック」や「anego」よりは面白かった。
これ、雑誌に連載されていたらしいけど、その雑誌というのがアラサーとかアラフォーとか言われる世代が読むファッション雑誌。その類をほとんど読まない私には、どういう人たちが読むのかなぁって気もするんですよね。まぁお仕事をしている人たちは、自分のファッションに気を使うだろうから、それでこういう雑誌もチェックするんだろうけど。



掏摸/中村文則★★★
河出書房新社
「土の中の子ども」で芥川賞を受賞した作者の作品で、私はその「土の中の子ども」は雑誌のほうで読んでおりましたが、陰気な作品だなぁと思った程度で、興味をそそられることはなかったのでした。が、最近、トシのせいか、その陰気さに誘われるがごとく(^_^;)この本の評判を聞き、手にとって見ました。 内容は、主人公は、スリなんです。裕福な人間からしか奪わない・・と言っているけど、スリには違いなく。 そして、過去に何かがあり、いったん東京を離れ身を潜めていたのに、また東京に戻り、そこで、以前関わりのあった人物から脅されるようにまた、新たな事件に関わっていく・・それも一流のスリとして。。。 と言う話で、もっとハイテンションなエンタメというか、悪事を働く中でもそれなりの高揚感や達成感の感じられる物語かと思っていたんだけど、そうではなく、こちらもやっぱり陰鬱で救われない気持ちが漂う、アンニュイ感のある作品でした。 人物の関わりや、その背景がイマイチ描きこまれてないのが、私の好みではなかったかな。だって、薄いんですよ、本として。もっとページ数もあって色々と書き込まれている小説のほうが、こう言う話の場合、面白くなったんじゃないかな??などと、不遜な感想を抱きました。 でも、全編に流れる破壊に向かう、気だるく陰気な負のパワーみたいなのは、結構好きかも。 スリと言うと、原田宗典さんの「平成トム・ソーヤー」があります。結構面白く読んだんだけど、今読むとまた違う感想が沸くんだろうなぁ。



判事の家/橘かがり★★★
ランダムハウス講談社
1949年の夏、立て続けに不可解な冤罪事件が起きました。 下山事件、三鷹事件、そして松川事件です。 本書の著者は、その、松川事件の判決を下した判事の実の孫に当たる人だそうで。 先日新聞にチラッとそのような記事が載っていたので、興味を持ち、読みました。 下山事件や三鷹事件の名前は聞いているけれど、松川事件って全然知りませんでした。 戦後間もない混乱の続いていただろう時期とは言え、恐ろしい事です。 ただ、私はこう言う「小説」を読むと「どこまでが本当なんだろう」と思ってしまうのです。 著者の祖父が、その判事であるとして、その息子である著者の父親は、実際そういう人生を送ったのか。 後書きにも「全部が事実ではない」と書かれているので、実際はどうだったのか、気になってしまう。 ただ、ここは真実だっただろうと思うんですが、著者が、当時冤罪で若い盛りの10年を拘束されてしまったという、間違って逮捕されてしまった人との対峙する場面があります。 自分は直接関係ない。自分がしたことではなく、自分に罪はない。だけど、その関わりの中で生きていると言うことは、完全に無関係とは言えない。その胸苦しさ、いたたまれなさは、すごく良く伝わってきて、こちらまで身がすくむ気持ちでした。 自分がこの著者の立場だったら、こんな風にきちんと、面と向かって謝罪なんてできない、話を聞くことも出来ないだろうなぁ・・と、思いました。 ノンフィクションのほうがいいなぁと思うけど、逆に、この孫さんの立場から、その後の「判事の家」で何があったのか、本当のことを知りたい、と言うのはあまりにも下世話でありましょう。



鉄の骨/池井戸潤★★★★
講談社
中堅ゼネコンに現場監督として勤める若い社員が、あるとき唐突に事務職に転向させられます。そこは通称「談合課」と呼ばれる業務課で、主人公は何も知らないまま「談合」に関わっていくのです。 ゼネコンとか談合とか、全然わからない世界の話だったけど、凄く分かりやすくサクサクと一気に読めました。 でも、談合と言うものに対してどう考えるべきなのか分からない、談合が是か非か。非であるに違いないのに、そうとばかり言い切れないと言う事に対して、すごい説得力があって、「清濁併せ持つ」という言葉が妙に心に残ってしまいました。談合はダメ。それが揺るがないままで読ませてもらったら、もっとすっきりと読めたんだろうけど、終始何が良くて何が悪いのか、よくわからなくなってしまい難しかったです。 と言う意味で、「空飛ぶタイヤ」ほどのすっきりとした読後感はなかったかな。 ラストも結局の所どうなのか、私には理解出来てないと思う。 私生活の絡め方はとてもよくて、学生時代からの付き合いの恋人たちが、大人になるにつれ考え方や環境の違いからすれ違ってしまう部分などは、かなりリアルに描けていて、彼女の気持ちなんかにすごく感情移入できました。 しかし、これまた最後はどうなったんだろう。自分だったらどうだろう・・とか、自分の子どもたちだったら・・とか、色々思い込んでしまいました。



逃亡者/折原一★★★
文藝春秋
折原一という名前はよく知っていて、かなり心をそそられるミステリー作家だったけれど、なんとなく読みそびれ、そのうちに私は「本格派」を読まなくなって、しかし今回とても評判がいいので読むにいたり、これが今回「初、折原」になりました。 読んでみて、案外ライトな感じの文章や雰囲気で、意外に思いました。 逃亡者って言うのは、主人公の殺人犯で、時効寸前まで逃げ切るか、時効ギリギリで捕まるかつかまらないかと言う15年を描いた作品です。 福田和子をモデルにした小説か・・・と思ったらそうではなく、文中にも「福田和子のような例もある」みたいな表現が出てきて、それにしてはあまりにも福田和子の軌跡に似た部分が多かったので「ん?」となってしまったです。 単に「フィクション」として読むのなら、「嫌われ松子」のような転落人生を描いたエンタメとして、結構面白かったんだけど、本格派の旗手だけあるなぁという驚きが隠されています。 だけど、その「驚き」のために、「逃亡者」を描きたかったのか、それとも別の何かを描きたかったのか、視点がぼやけてしまったように感じたし、はぐらかされたと言う感じがしてしまいました。 だから私は本格が苦手なんだなぁ・・・。 面白くて一気読みはしましたけどね。



犬の力/ドン・ウィンズロウ★★★★
角川書店
雰囲気的に、映画「ゴッドファーザー」や「アメリカン・ギャングスター」みたいでした。特に後者。 さしずめ、アート・ケラーがラッセル・クロウ。アダン・バレーラがデンゼル・ワシントンって言う感じがしました。そこに、ニヒルでクールで若い殺し屋(多分かなりのイケメン。冷徹に相手を殺しまくったり、黒装束に身を包み、バイクを駆るシーンなどは、ぞくぞくする魅力があった!)や、絶世の美女である高級コールガールなんかも登場して、上下2巻30年の物語は、飽きることなくスピーディーな展開で面白かったです。 が、いかんせん、文章自体ものすごく読みづらい。。。「ミレニアム」は翻訳苦手人間でもかなり面白く読めたけど、「犬の力」はちょっと読みにくかったので、前半かなり頑張りが必要でした・・・。でも、上巻の真ん中ほどまで来たら一気に面白くなり、加速も付きましたけど。 感想を書くにも、何にも書くことがないなぁ・・(~_~;) まぁ面白かった・・って感じです。好きだったのは、カランとノーラ、そしてそんなに重要人物じゃないけど、アートの助手を勤めた・・・名前を忘れてしまったけど・・・読んでいる最中は「感想を書くとき、この人の事が一番好きだったと書こう」と思っていたのに、名前もすっかり忘れてしまった。とほほ。アートはアダン・バレーラを捕まえよう、法の手にゆだねようとしているんだけど、この助手となった人は有無なく「殺しちまえばいい」と言う考え方で、凄い行動力で頼もしかった。うーん、名前が出てこない。。。 今回考えさせられたのは、北米自由貿易協定について。これ、以前見た映画の「ボーダータウン 報道されない殺人者」でも問題になっていて、こちら日本では実感がわかないけど(不勉強のせいもあるだろうけど)かなり問題がありそう。。どこがどうとかよくわかりませんが・・(~_~;) そんな社会的な背景も織り込まれていて面白かったことは面白かったけど、うーん、読みにくかった。 思い出したので、追記。 ラモス!ラモスです。お気に入りのキャラクター。押しが強く強引でとても頼りになる男らしい男。 ・・・あぁよかった。ほっとしました(^^ゞ ついでに書くけど、残忍なんですよ。敵方の殺し方。その残忍さ、グロさが好みでした。(なんと言う・・)



すべては遠い幻/ジョディ・ピコー★★★
早川書房
母を早くに失くし愛情深い父親と二人暮らしで寂しいながらも幸せに成長した主人公。今はアル中の恋人との子どもを育てるシングルマザーです。恋人とは婚約と言う形で付き合いつつ、彼のアルコールへの依存を見守っている感じ。 自らの仕事は愛犬と、行方不明者などの捜索に携わっています。 ところが、この主人公、ディーリアのもとに衝撃的な事実が舞い込む。それは父親が逮捕されたと言うもの。しかもその罪は、「誘拐罪」。誘拐したのは最愛の父親で、そして誘拐されたのはなんと、ディーリア本人だったというのです。ディーリアは当時、離婚した両親のうち、母親に引き取られ育てられていたのだけど、その母親のもとから父親はディーリアを奪った・・・その真実に、自らのアイデンティティを失い、足元が揺れるディーリア。 そして、恋人のエリックは弁護士と言う立場から、義理の父親にもあたるそのひとを弁護する事になるのだけど、何が過去にあったのか。濃いもやが段々と晴れていくにつれ、そこには驚くべき真実があったのでした。 と言う話ですが、父親が拘置所に拘留されているときの話や、恋人エリックのアルコール依存、ディーリアの母親との関係や、身を寄せた場所でのネイティブの女性との関わりやスピリチュアルなエピソード、あるいは幼馴染のフィッツとの三角関係など、読みどころがたくさんで面白いのだけど、正直言えばちょっと盛りだくさんに過ぎて、読むのが面倒だった部分もあった。私には、それら個々のエピソードが物語の中でスマートにつながってるような気がしなくて、ぶつ切りのように感じてしまったのです。 結局読み終えてみれば面白かったのは、「なぜ、父親はディーリアを母の元から連れ去ったのか、そして、なぜ口を濁していたのか」という部分だった。その部分は最後まで明らかにされず、心を引っ張られながら読めたのですが・・・主人公への共感などがあまりできなかったのも、残念だったかもしれません。



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感想



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