2013年の読書記録



友罪/薬丸 岳★★★★★
ここ3冊ほどハズレが続いた薬丸さん、諦めずに追いかけ続けて(何と言う無礼な発言、申し訳ないです)本当に良かった!!!と切に思う渾身の作品。本当に面白かった。最後は涙涙に暮れてしまった。

物語は、ジャーナリスト志望の青年、益田の視点で進んでいく。
彼はバイト先の出版社をくびになった後、川崎の寮付きのステンレス加工工場にやってきた。
その工場に、同期入社(バイト)で、寮もいっしょとなる鈴木と言う同年の青年がいたが、彼は人を寄せ付けず孤立している。
が、あることがきっかけで益田に気を許すと、次第にだんだん寮の仲間とも打ち解けていった。
しかし、鈴木にはある「過去」があった。






ここからネタバレです。







鈴木が犯した罪、それは二人の幼児殺しの罪。神戸の酒鬼薔薇事件の少年Aをモデルとしていると思われる。鈴木は少年Aのその後の姿なのだ。
現実でも、酒鬼薔薇事件の少年Aは、更正施設(医療少年院)をとっくに出て、一般社会で暮らしているのだろう。今まで読んできた、少年犯罪のノンフィクションによると、この少年Aのことではないけれど、遺族への賠償などの義務を放棄し、謝罪の言葉もないまま、まさに「のうのうと」暮らし、あまつさえ「なぜ謝らなければならないんだ」などとのたまっていると言う話を読んだことがあり、憤懣やるかたない気持ちになったことがある。

しかし、本書の鈴木は、自分の犯した罪の重さに苦しんでいる。とてもとても苦しんでいる。
その姿は痛々しいほどで、こんなにも苦しんでいるのだから、赦してやって欲しいと思ってしまう。そして、益田に心を開き、寮の仲間たちと打ち解けはじめ、美代子に思いを寄せられる姿を見て、読者として喜びを感じずにいられない。

そんな平穏な幸せは、やはり鈴木の犯した罪の大きさには、ふさわしくないのだろうか。やがて鈴木の正体は世間に暴かれ、同僚たちにも過去が分かってしまう。
自分だったら・・・と思うよりも、ただひたすら、鈴木が哀れに思えてしまった。
益田には、どうか週刊誌に記事を書かないで、鈴木を売るような真似はしないで、と願ったし、また、鈴木の気持ちを踏みにじらないで・・と、切に願った。

鈴木は姿を消してしまう。
そのころには読んでいて涙が止まらなかった。どうにかならないのか、と。
とても悲しかったけれど、益田が書いた手記によって、ひとすじの光を感じることが出来たのが救いだった。
自分が出来ないことを益田に託したい。それはあまりにも手前勝手な理屈だけど、それでも希望を感じたい。

辛い中にも大きな感動があった。オススメ!!!




薬丸さんの悪党や先日読んだ石田衣良著「北斗」のときにも考えさせられたけれど、犯罪加害者がその後をどう生きるべきかと思う。
死刑にならなかったらいつかは「娑婆」に出ることが出来、一般社会の中で生きていかねばならない。
生きている間中、目を覚ましている間中ずっと罪の意識を抱いていることは、不可能だろう。
鈴木のように、ちょっとしたことに喜びを感じ、笑ったり嬉しかったり恋をすることもあるだろうし・・。
でも、遺族から見たら加害者のそうした姿自体に激しく苦しめられてしまうと言う。
自分は常に殺された家族を思い苦しみぬいているのに、加害者は少年法によって手厚く守られる。
なぜ殺した本人のお前がのうのうと幸せに生きているんだ・・・と言う気持ちになることは容易に想像できる。
少したりとも喜びを感じることなく、ひたすら罪の意識に苛まれて苦しみぬいて生きる。それが加害者に求められる。
でもそんなことは不可能だ。
生きていればどうしたって「喜び」を感じたいと思ってしまう。
たとえ真摯に罪に向き合い、贖罪の気持ちを持っている人間だとしても。
そうすると、加害者が生きるためには被害者の赦しがどうしても必要なのではないだろうか。

本を読んでいるときは鈴木に同情して、私は鈴木を赦してあげて欲しいと思ってしまったけれど、実際に自分が被害者側だったら??おそらく赦すことなんて出来ないと思う。気が狂いそうになるほどまで憎むだろう。いや、実際頭がどうにかなってしまうと思う。
また、鈴木のような、いや、酒鬼薔薇事件の少年Aが近所に越してきたら?同じ町内に住んでいたら?正直に言えば、とても怖いと思うだろう。普通に生きていることに違和感を抱くかもしれない。少年Aが鈴木のように罪の意識に苦しんでいるなんて、想像もしないだろう。

この小説を読んだからと言って、加害者に理解ある態度を取れるかどうか分からない。むしろ取れないと思う。
だけど、どうしてこんなに感動させられたんだろうか。
どんな恐ろしい罪を犯した人間でも、あるいは「生まれ変わる」ことが出来るかもしれないと、そして、ひとは赦し赦されて生きるべきだと、どこかで信じたい自分がいるから・・なのかな。



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