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2001年こんな本読んでます page 3



後催眠  松岡圭祐  小学館

おなじみ「催眠」の、嵯峨敏也が主人公。。。。とくれば そしてこのタイトルからしたら、 またまた 奇妙な事件が起こって、殺人があって。。。と、期待してしまうのが筋だろう。 でも、いくら読んでも日常よりも微妙に不思議な感じがするだけで、一向にドラマチックな 展開にならない。正直物足りない気持ちで読み進めた。でも、最後にはとーっても深い感動に包まれ わたしは夫がそばにいるのに恥ずかしげもなく泣きながらこの物語を読み終えたのだった。 三たびの海峡に続き、わたしの「2001年、わたしが選んだベスト3」に入りそうなカンジ。。




真冬の誘拐者  本岡類  新潮社

この手のストーリーは大すきである!「子供を誘拐したのは誰?何のために?」 いかにも、ミステリーって感じがするでしょ?作者は多分それほどメジャーなカンジの作家ではないように思う。わたしが読んだのは これが三作品目。他には 「羊ゲーム」「神の柩」だ。どれも、わたしの好みにぴったりしてる。 今回のストーリーは 野沢尚の「リミット」北川歩美の「影の肖像」を、ほうふつとさせた。 どちらもかなり好きな作品だ。



窓 乃南アサ

聴力障害をもちながらも 周囲に暖かく支えられ 幸せに生きる女子高生の麻里子。 ところが最近では訳のわからないイライラに悩まされていた。それを自分では 周囲から受ける疎外感のせいだと感じている。 受験に対する不安感や 聴力障害による焦燥感のなかで 起きるある事件。 そこで初めて自分以外の聴力障害者の男の子と知り合う。 そのことで、麻里子がどんな風に成長していくのかが 見所でもアリ 感動できる部分でもある。 人は誰かに支えられて生きているのだ。 それは 耳が聞こえようと聞こえなかろうと同じこと。。。。



深紅   野沢尚

「私だけ、生きててごめんね」。。。その思いを胸の奥深くに埋め込み 生きる奏子。奏子の家族は、修学旅行中の奏子を残して全員、幼い弟さえもがある人物に惨殺されてしまったのだ。 他人には自分の心を見せることなく 恋人にさえ 自分を偽って接している奏子だが、 犯人の死刑判決のあと 犯人の娘に近づく。その目的は? その出会いがもたらすものは? ヒトが自分の命を確認する時、生きる事を見つめる時 深い感動が生まれる。



キスまでの距離  村山由佳

5歳年上のいとこカレンに恋する高校生のショーリ(勝利)17歳!!苦く切ない青春真っ只中。 30半ばを過ぎて こんな小説読むんじゃなかった。。。(笑) 「けっ!!」って感じ。。。(笑) カレンってば 5歳も年下の男の子に「オレが守ってやらなきゃ!!」「オレがそばにいてやらなきゃ!」 って、思わせる 初々しくはかないイメージの純情可憐な女性なのだ。 どうして「けっ」かと言うと そりゃ、わたしが真逆のオンナだからでしょう(爆) 男ってやっぱこういう女性が好きなのね。...まあいいけどさ!! デモなんかうらやましくて(それが正直なきもちか!)許せないぞ カレン!! 冷静な感想になっていなくてm(。−_−。)mス・スイマセーン。。。



片想い  東野圭吾  文芸春秋社

最近の東野圭吾の作品の中では好きなほうだったかな? と言うのもじつはわたしは 「秘密」があまり好きじゃないんである。。こんなにも人気ある(東野圭吾の名前を全国に知らしめた)作品を、 好きじゃないなんて 親東野圭吾派に、怒られちゃうね。でも、本当なの。。m(。−_−。)mごめんナサイ!! だってあれミステリじゃないんじゃ。。ところがこちらはれっきとしたミステリ!それだけじゃなくて 東野圭吾さんお得意の スポーツもの(OBだけど)なので 生き生きと描かれてるような気がするのだ。 そんな中にも性同一性障害という、難しいテーマを扱いながら 人間の本質とか、差別とかについて じっくり考えられるような作品。 最後、感動の涙!!



三たびの海峡   帚木蓬生  新潮社

戦時下 日本によって 祖国を支配されていた人たちがいる。
「天子様の赤子」という名目のもと、日本に強制連行された人たち。
人間としての尊厳を踏みにじられ、死んでいった人たち。
半世紀を越えてよみがえる日本の過去。
二度と渡ることのないつもりの海峡を、男が韓国から日本に向けて 再び渡る決心をしたのは  記憶の底に封印したはずの、日本にいる息子に会うためだった。
そして日本が犯した罪を 風化させようとしているある計画を阻止するためだった。
全編 臨場感あふれるみずみずしい描写で 心理 情景ともに 生き生きと表現されており、 まるでその場に同席して、その場で会話を聞いているかのような気がした。
40年ぶりの息子との再会、強制連行の過酷さ、父と慕う人の死を語る場面など、、 涙を流すことも 一度や二度ではない。
戦争は人を変え 国を変える。けれど、その過去に目を瞑り 事実を捻じ曲げ、正当化 しようとしても辻褄あわせにしかならない。 日本が本当にすべき事は、決して辻褄あわせではなく 事実を見つめて、この国の歴史が 死者の上に築かれた歴史であると自覚する事である。
森村誠一の「人間の証明」「悪魔の飽食」とともに日本人が読むべき 本当の「教科書」だと思う。  



カリスマ  新堂冬樹   徳間書店

カルト教団「神の郷」の、教祖 神郷は、子供のころ母親がカルト教団に入信したために起きた 凄惨な体験によるトラウマから、つらい人生を送ってきた。その結果として、神の郷 という カルト教団を作り上げたのだった。
おそらくオウム真理教をモデルにしてると思うが、 上下2冊組みの長い物語のなかで、主人公の(?)カリスマ神郷が 訳のわからない話をすること、全体の4分の一は、神郷のひとり喋りだったように思う。 前世の因縁がカルマになっている、とか作り話を延々とするのだ。 読んでいるとこちらまで洗脳されそうになるので(笑)適当に斜め読みしてしまった。。。(^-^;
神郷に妻を取られまいと奮闘するダメサラリーマンが、あまりにあわれで、でもなんとなく笑いを誘う 。この対比のアンバランスなようで、どっちも一つ間違えばギャグになりかねない感じ。。。作者の 作風かしら?



ライン   乃南アサ

感想を書くにあたって、本を妹に貸してしまったことに気づいた!! だから、名前とかが思い出せない。。。。
とにかく 今より10年ぐらい前の 設定でPCが普及し始めたころの物語。主人公はパソコン通信(チャット)にはまった 浪人生 薫。男なんだけど「 kahoru 」という、HNで、女の子になりきってチャットルームの 人気を独占している。
ところがルームの中のひとりの男が、ほんきでその「 kahoru 」姫を 好きになってしまったからさあ大変!!はるばる会いに来るなんていう。
しかし、男は薫に会おうとしたとたん、殺されてしまう。犯人は 薫か? 「 kahoru 」姫か?
作者にとってデビューから数えて2作目の長編だそうで、 なんとなく若い印象を受ける作品だけど、いまPCの前にいる人なら誰でも 共感できる部分があるように思う。
虚構と実像を、使い分けようとしても 所詮わたしたちはひとりの人間でしかないという事を忘れてはいけないと思う。



山妣 板東真砂子  新潮文庫

越後の山里を舞台につづられる、かなしくも不思議な物語。
土地の大地主「阿部一族」の女中奉公をしている妙。 目が見えないので瞽女(ごぜ)の修行をしている、妙の姉琴。
ひっそりと貧しい暮らしのこの村に、奉納芝居に招かれた役者たちがやってきた。
誰もが夢中になる美貌の持ち主の役者、涼之助は体にある特徴を持っていた。 阿部家の若嫁てると、涼之助がであったとき、物語はある結末へと進みはじめる。 山に棲んでいるといわれる「山妣(やまんば)」。その正体を解き明かしながら ある女の一生と、それぞれの人生が描かれる。
捨て子で、その肉体の特徴のために、みんなの慰み者になっていた涼之助が 本当の愛を知る日はくるのか。
文庫本にして上下2巻の大作だが、 読み応え充分で、少しも長いとは思わなかった。
特に 涼之助と琴のふれあいは、涙を誘い、こころにじんと染みた。