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カラフル 森 絵都 理論社
生前大きな過ちを犯して死んだ(らしい)罪な魂の「ぼく」は、
輪廻のサイクルからはずれてしまったが、天使たちのいきな計らいで(?)
抽選に当選し、チャンスを与えられた。
チャンスとは、「小林真」なる人物の、抜け殻(自殺して10分前に死んだばかりの、肉体)
を借りて、「小林真」の生活をして(修行)自分の過ちを自覚した時、無事に輪廻のサイクルに復帰できると言うのだ。
こうして、「ぼく」は「小林真」という、見ず知らずの人生を借りて、この世に戻ったのだ。
「小林真」として暮らすうち、なぜ、この元の肉体の持ち主が自殺したのかを知ることになる。
憧れの女の子の「援助交際」父親の「利己的な出世」母親の「不倫」兄による「いじめ」学校での「孤立」
・・・。ぼくは「小林真」の人生に絶望するが、「ぼく」という他人の目を通してみると
「小林真」本人には見えなかったいろいろなものが見えてきた。
それによってだんだんと「ぼく」が変わっていくのを感じる。
それは
生活がモノクロから、カラーへと変わっていくかのように・・・・。
児童書と言うが子供だけに読ませていたのではとてももったいないほどの内容だ。
「人は自分でも気付かないところで、誰かを救ったり苦しめたりしている。この世が余りにもカラフルだから、
ぼくらはみんないつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。」
そんな風に思えるこの主人公に、共感して自分も励まされる一冊。ぜひ!!01/10/04
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お眠りわたしの魂 朔立木 光文社
日本の司法を預かる裁判官の実態って(裁判所の実態にも触れている)こんなものかな〜なんて思った。
なんせ
全編主人公が女に宛てた手紙で構成されているのだ。男は東京高裁の裁判官。
河川堤防決壊・・か、なんかのことで国と住民との間に起こった裁判を担当している。
ストーリーの大半は、この男が、堤防の事で協力を依頼した地質学者の女性に当てた手紙だ。
はじめは純粋に地質学の事で裁判の資料としての助言を求めていたのだが、
だんだんと、ラブレターに変わっていく。
ところが同時進行で他にも数人に宛てたラブレターが登場。
主婦、弁護士、裁判所関係者、妻の妹・・。ざっと数えただけでもこの本の中での、
手紙の宛名は8人いると思う。
地質学者に一番ご執心で、くどくどと「僕のものになってください」みたいな手紙を書くんである。
いままでになく本気なのだそうだが、その片一方で、またまた他の女を口説いている。
結果的にはこの「他の女」に殺される。「しつこい」と言う理由で。
物語は男が女に殺された所からスタートしている。
わけのわからない男だが可哀想な部分もある。
妻とはうまくいっていないので、(これだけ浮気を重ねればあたりまえである)
その泣き言を妻の妹「敏ちゃん」に宛てて書いている。
もちろん敏ちゃんとも情交している。でも、この敏ちゃん宛ての手紙が
いちばん、心情を吐露していて面白い。
ここで描かれる男の妻がまた、すごい。ふたりの間は壊滅的なのだが、離婚に至らない。
パワーがないと男は言う。疲れ果てたのだと言う。
それが敏ちゃんへの手紙(数は少ないけれど)で描かれていて、同情を誘う。
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転生 貫井徳郎 幻冬舎
心臓移植によって、命が救われた男が、移植以前の自分とは違う部分のある自分に戸惑い、
真相を解明していく。これが「脳」の移植というテーマなら、SFチックだけどありきたりな
展開になりそうなのだけど、「心臓」なので面白いわけだ。
そもそも人間の記憶とか感情と言うのは、今の科学では解明されていないようで、
心臓が記憶を持っている、ということもあながちバカにはできない事らしい。
主人公の戸惑いや、生きる意欲などが前向きに表現されていて、気持ちが良かったが、
結局ミステリーとして読んだわたしは、すこし、物足りなかった。
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悪意 東野圭吾 講談社文庫
全編悪意に満ちている。
こちらとしても、「こうだろうなー」などと、推理しながら読むわけだけど、
あたっていると思いきや、はずれたり、かといってそのまま終わるわけでもなく・・というふうに
、どんどん展開して行く。
野々口と言う作家の手記から始まり、加賀刑事の独白、また野々口の手記・・というふうに
視点がどんどん変わるのだが、試行錯誤しながらも真相に近づいていく。
犯人は早い時期にわかってしまうが、動機がなかなかわからない。
動機がわかった時、そこで本当の悪意が見えてくるわけだ。
こんなにだまされた小説もないと思う。全編悪意に・・・・・。
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超・殺人事件<推理作家の苦悩> 東野圭吾
新潮エンターテイメント倶楽部
サブタイトルからも推測できるように、推理小説作家の苦労話を
面白くシニカルに描いてある。
税金に苦労する作家の話、似非理系人間を摘発しちゃう(?)話、
このまま出版業界と読者が高齢化していく行く末を描いた話、長編流行りに対する風刺、
選考委員の苦労につけ込んだ商売の話・・・・などなど、ちょっと推理小説とは一味変わった
短編集だ。
だけど、わたしが好きなのは東野圭吾氏の読者をちょっとおちょくってるかのような
エッセイ的な意味合いが含まれてるというところ。
とくに「似非理系人間」という言葉にしても、うーん・・と考え込まされるのだ。
実はこの本全体が「似非活字中毒」に対する揶揄の意味合いが大きいと思う。
「あんた、本当に文学を愛して本を読んでいるの?自分の胸に手を当てて
ようく考えてみな」って、言われてるみたい。
最後の章、「超・読書機械殺人事件」の、ラスト数行でズバリとぶち切られたような感じで、
実はわたしは心に覚えがあるらしくとっても傷ついてしまったのだった。(苦笑)
それでも、東野圭吾氏の作品が好きなわたしって マゾかしら?
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同級生 東野圭吾
事故で死んだ同級生は自分の子供を妊娠していた。その事故には不審な点があり、
仲間と真相を探る。実はその本人にも人には言えない秘密があり、
物語が進行していくうちにそれが明らかになっていく。
妹思いの優しいお兄ちゃん、だけど大きな苦しみを抱えていた。
青春の多感な年齢の、突っ張った感じが良く出ていてわたしは好きだなー。
「大人なんかクソ食らえ!!」という態度の主人公に自分の若いときをなんとなく
思い出したりする。(誰もが一度は通る道だと思う)
ミステリーとしてのトリックもしっかり楽しめたし、社会派的な意味合いも含まれており
、充分満足の1冊だった。
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回廊亭殺人事件 東野圭吾 光文社文庫
場所は通称「回廊亭」。
一ヶ原高顕なる人物の遺言状公開が行われる。
そのなかに、
ある30代の女性が若干70歳の老婆に化けて潜入。
自分を殺そうとした人物に復讐するために・・。
いかにも本格派という感じのストーリーだけど、なにせ、30歳の女が
70歳に化けると言う所が無理ではないでしょうか。
ハリウッドの特殊メイクでなら実現もするだろうが、ただのメイクだけで化けられるわけがない。たとえ
顔に細工ができたとしても、立ち居振舞いをそれらしくしたとしても、手や首筋の年齢はごまかせないのです。
シミをつけてみたり、色をごまかしてみたりしても、
手に現れた年齢は隠しようもない。これ、ここ最近のわたしの実感。(苦笑)
ご本人は感想で「女性を主人公にしたので難しかった」と、書かれているけれど、そんなことじゃないでしょ〜
と、突っ込みたくなっちゃった。ゴメンネ東野圭吾センセ。でも、好き♪
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慟哭 貫井徳郎 東京創元社
出世コースからはみ出したかなんかで、若いのに退職してぶらぶらしていると思われる、そんな
男が新興宗教に興味を示したりしながら、自分の苦しみを軽くしようとあがく物語と、
ある事件で東奔西走する警察内部で、その冷酷無比なイメージから孤立する佐伯警視が、
事件を通して自分の中の自分でも気付かなかったある思いに気付いていく、という物語の2重構造。
事件とは「連続幼女誘拐殺人」。(貫井さんって誘拐物がお好き・・)
2重構造の二つの物語が最後でクロスした時、待っているのは「慟哭」か「驚愕」か・・。
感想を書いてはいけない作品なのである!
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マイディア 氷室冴子 角川文庫
「赤毛のアン」「若草物語」「秘密の花園」「少女パレアナ」「あしながおじさん」
・・・などなど、かつての文学少女(?)たちなら「なつかし〜〜」
と、微笑む事請け合いの「家庭小説の手引き書」である。
氷室さんが 小さい頃どんな風に本を与えてもらい、どんな本から読書にはいり、どんな本を読んでいたか
なんていうのがエッセイで綴られるのと同時に、前出の作品を世に送り出した女性作家たちについても、
その時代背景や生きて来し方まで分析して、なつかしの物語たちを解説している。
わたしも「赤毛のアン」などは今でも大好きだけれど、「こんなに出来すぎな奥さんには、なれないよ」
みたいな僻み根性も・・(苦笑)。だけどそれでもマシュウのことを考えると感動せずにいられない。
氷室さんもやはり同じみたい。マシュウへの愛情溢れる「愛しのマシュウ」を読んだら感動した!
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くますけといっしょに 新井素子
古本屋さんをぶらぶらしていて つい買ってしまった。
新井さんの文体はすごく独特。すらすらと読めてしまうのだ。
ストーリーは親を事故で無くした少女が 母親の親友の女性に引き取られていくんだけど
少女は片時も「くますけ」を離さない。くますけというのは少女が可愛がっている
ぬいぐるみなのだ。他人から見たらただのぬいぐるみだけれど、本人にとっては
友達でもあり家族でもあり、心の支えなのだ。引き取った女性の夫は、少女を気味悪がるけれど
女性の方はくますけもふくめて少女を大切にしようとする。それには、じつは理由があったのだ・・。
子供の中のサイコな部分を描いたすこし変わった物語。ラストですこしびっくりさせられる。
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